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 農林水産省がデジタル人材の民間登用に乗り出した。2020年12月8日から2021年1月4日にかけて、農水省が取り組む各種のデジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクトに取り組む人材を公募する。

農水省はデジタル人材の民間登用を進めるほか、データサイエンティストも今後5年で100人程度育成する
農水省はデジタル人材の民間登用を進めるほか、データサイエンティストも今後5年で100人程度育成する
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 狙いは、官僚に乏しいDXの知見を、民間から取り込む点にある。DXの推進にはデータ分析や課題発見、企画立案、部署横断のプロジェクト推進や業務プロセス改革といったスキルや経験が必要となる。

 公募の対象となるのはITコンサルティングやプロジェクトマネジメントに関する高度な経験を有する人材だ。ただ農水省入りを果たすと年収は明らかに下がるという。

 行政DXに本腰を入れる霞が関においても農水省はDXの先兵として一目置かれる存在。デジタル庁も民間人材を積極的に登用するとされるなか、農水省の民間公募は霞が関DXの先駆けとなるか。

省内データの分断、解消図る人材を

 農水省がこのほど公募する人材は「デジタル政策プロデューサー」と「システムプロデューサー(システムディレクター)」の2職種である。人材サービス大手ビズリーチのサービスを使って公募する。公募する人材は農水省が2020年8月に設けたDX推進の専任組織「デジタル戦略グループ」に配属するという。

 「ITとデータを活用して、省内の業務改革や生産者の課題解決を図る人材を募りたい」。農水省でデジタル政策を担当する信夫(しのぶ)隆生大臣官房審議官は公募への期待をこう語る。

 その背景には次のような現状がある。「農業を成長産業にするためには、生産者から消費者までをデータでつなぐバリューチェーンが欠かせない。ただ、省内のデータは多くが分断されているうえに紙を使った業務プロセスも多い。データ活用ツールを使いこなすスキルを持つ人材も足りていない」(信夫審議官)。

 公募するデジタル政策プロデューサーはDX関連プロジェクトの企画立案と実行を率いる人材だ。1~2人の採用を予定する。「自ら課題を見つけたうえで必要なデータを集めて分析し、行動計画を作れるスキルを持ち、創意工夫あふれる人材を求めている」(信夫審議官)。

 具体的な仕事の1つがオンライン申請システム「農林水産省共通申請サービス(eMAFF)」を使った業務改革である。eMAFFは紙ベースの行政手続きの申請から審査、承認までを全てオンラインでできるようにするシステム。農林業の経営者は自分のパソコンやスマートフォンを使って補助金などを申請できる。農水省は2022年度までに所管する全ての行政手続きをオンライン化する方針だ。

 信夫審議官は「eMAFFにはいろいろな可能性がある」と話す。これまでバラバラに集めたり管理したりしていた農地経営に関する情報を一元管理することで、様々なシステムとのデータ連携が容易になるとみているからだ。

「農林水産省共通申請サービス(eMAFF)」を活用したDXプロジェクトの例
「農林水産省共通申請サービス(eMAFF)」を活用したDXプロジェクトの例
(出所:農林水産省)
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 例えばeMAFFのデータをデジタル地図に反映させて、農業経営者が希望に合った農地を検索したり関係機関が農地の権利移動手続きを簡素化したりできる。将来的には自動運転トラクターやドローンを使った耕作にも道が開けるという。