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 日産自動車がフランスRenault(ルノー)のハイブリッドシステム「E-TECH」向けに開発したガソリンエンジン――(図1、2)。ポート噴射でありながらGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルター)を搭載した。

図1 ルノーのハイブリッドシステム「E-TECH」向けに日産が開発したエンジン
図1 ルノーのハイブリッドシステム「E-TECH」向けに日産が開発したエンジン
排気量1.6Lの直列4気筒ガソリンエンジン。ポート噴射だが、GPFを搭載する。(出所:日産自動車)
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図2 E-TECHを搭載するルノーの新型HEV「CLIO E-TECH」
図2 E-TECHを搭載するルノーの新型ハイブリッド車(HEV)「CLIO E-TECH」
(出所:ルノー)
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 GPFといえば、これまでは粒子状物質(PM)が発生しやすい筒内直接噴射(直噴)のガソリンエンジンでの搭載が注目されていた。ポート噴射はあらかじめポート内で燃料と空気を混合するため、直噴と違ってPMの発生は少なくGPFは不要とみられていた。

 だが、日産によれば、ポート噴射でもエンジンの冷却水の温度が低い状態ではPMの排出量は質量でも個数(PN)でも増える傾向にある。しかも、ハイブリッド車(HEV)/プラグインハイブリッド車(PHEV)の場合、エンジンを停止させる時間やエンジンを再始動する頻度が、通常のエンジン車に比べて増大する。そのため、PMやPNを発生させやすいとされる、エンジンの冷却水の温度が低く排ガス後処理装置(触媒)が冷えた状態での再始動が繰り返されるケースが出てくる。従って、HEVやPHEVでは、ポート噴射でもPMやPNの低減が重要になってくる。

 こうした点を考慮して、日産の上記のエンジンでは、冷却水の温度が60度以下と低いときには、エンジンの点火時期を遅角化して排ガス温度を高めて触媒の暖機を速める暖機モードでの運転に加えて、燃費に有利な「上乗せ発電」を抑制する制御を実施している。

 上乗せ発電とは、エンジンを効率の高い動作点(回転数とトルク)で使うために、必要とされるトルクに加えて、発電の負荷をわざわざエンジンにかけて運転させる方法である。発電した電力は電池にためておき後で使えることから、燃費の改善に寄与する。

 ただ、上乗せ発電では、エンジンに余分に燃料を噴くことになる。冷却水の温度が低く噴いた燃料が気化しにくい環境においては、ポートや気筒の壁面、ピストン頂面に燃料が付着しやすくなり、PMやPNの増大の大きな要因になる。

 すなわち、上乗せ発電の抑制には、PMやPNの低減にはプラスだが、燃費の改善にはマイナスというトレードオフがある。日産は、こうしたトレードオフをできるだけ減らして、排ガスと燃費を両立させるためにGPFの搭載を選択した。

 実は、欧州連合(EU)の現行排ガス規制「Euro 6d」では、ポート噴射のガソリン車(HEVやPHEVも含む)に対するPMやPNの規制はない。それにもかかわらず、日産がGPFの搭載を決めたのは、「ポート噴射でも市場環境下で(直噴と同じ)規制値を守るべきだと考えるから」(同社パワートレイン・EV技術開発本部パワートレイン・EVプロジェクトマネージメント部エンジンプロジェクトマネージメントグループ主担の松田健氏)だという。

 昨今は、自動車メーカーでなくても、車両を購入してくれば排ガスを測定できる時代である。第三者による測定結果において、ポート噴射のガソリン車(HEVやPHEVも含む)としては規制上で問題がなくても、それが直噴のガソリン車やディーゼル車に対する規制値を超えていたら、確かに問題視される可能性は十分にある。