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 次世代車の“頭脳”ともいえる統合ECU(電子制御ユニット)を巡り、車載半導体メーカーの競争が激化している。オランダNXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)は今後の高性能化が見込める「セントラルゲートウエイ」を中心に事業を拡大したい考えだ。

 現在、クルマの電気/電子(E/E)アーキテクチャーは「ドメイン型」が主流である。車載ネットワークのルーター機能をつかさどるセントラルゲートウエイに、ボディー系、パワートレーン/シャシー系、情報/コックピット系、ADAS(先進運転支援システム)/自動運転系の各ドメインECUがつながる。今後はドメインECUを車両の場所ごとに分割するゾーンECUも検討されている。

E/Eアーキテクチャーの進化
E/Eアーキテクチャーの進化
(出所:NXP)
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 「2022年以降のトレンドの1つが、セントラルゲートウエイにボディー系のドメインECUを取り込む動きだ」。NXPセミコンダクターズの日本法人であるNXPジャパン 第一事業本部 マーケティング統括部 車載マイクロコントローラ部 部長の山本尚氏はこう指摘する。すでにドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン)の電気自動車(EV)「ID.3」はそのような構成をとっている。

NXPジャパンの山本尚氏
NXPジャパンの山本尚氏
(出所:NXP)
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 ID.3ではセントラルゲートウエイ(コネクテッドゲートウエイ)にルネサスエレクトロニクスの車載SoC「R-Car M3」を採用した。対するNXPは、20年1月の「CES」で発表した車載SoC「S32G」で、この市場を狙う。「引き合いは強く、採用を検討しているユーザーが国内外で複数社いる」(同氏)。R-Carの強力なライバルといえそうだ。

車載プロセッサー市場ではNXPとルネサスが2強
車載プロセッサー市場ではNXPとルネサスが2強
(出所:NXP)
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 S32Gは車載ネットワークのパケット処理を担うネットワークアクセラレーターを搭載し、CPUの負担を軽減できるほか、サイバーセキュリティーにも強い。NXPはICカード向けのセキュアマイコンで高いシェアを持ち、その技術をS32Gにも使っている。

「サービス指向ゲートウエイ」の部分にS32Gを使う
「サービス指向ゲートウエイ」の部分にS32Gを使う
(出所:NXP)
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 アクセラレーターによって余力が生まれたCPUを使って、さまざまなアプリケーションを実行できる。その1つが、ドライブレコーダーやDMS(運転者監視システム)の統合である。ドライブレコーダーやDMSの映像をセントラルゲートウエイのAI(人工知能)で処理し、その情報をクラウドに送信する。運転の状況に応じて保険料を割り引くサービスなどに利用できる。

セントラルゲートウエイにドライブレコーダーやDMSの機能を統合
セントラルゲートウエイにドライブレコーダーやDMSの機能を統合
(出所:NXP)
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 「AIアクセラレーターを手掛けるパートナー企業と技術を開発しており、自動車メーカーや1次部品メーカー(ティア1)に提案している」。同社第一事業本部 マーケティング統括部 車載マイクロコントローラ部 ADAS、Vehicle Control 担当部長の早坂学氏はこう説明する。

NXPジャパンの早坂学氏
NXPジャパンの早坂学氏
(出所:NXP)
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 車載ネットワークのハブであるセントラルゲートウエイの特徴を生かした用途もある。ボディー系やパワトレ/シャシー系、コックピット系の各種センサー情報を集めてAIで分析し、故障を予知したり、サイバー攻撃を検知したりする。「こちらの用途もパートナー企業と具体的な取り組みを進めている」(同氏)という。

センサー情報をAIで分析し、故障を予知
センサー情報をAIで分析し、故障を予知
(出所:NXP)
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AWSと連携
AWSと連携
(出所:NXP)
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 ルネサスエレクトロニクスは、同社の車載SoCの強みとして、過去のソフト資産を再利用できる点を挙げている。実際、ID.3ではその点が高く評価され、採用につながったようだ。これについて、NXPの山本氏は、次のようにコメントした。

 「以前はECUに各社各様のOS(基本ソフト)を使っていたため、一度作ったシステムはハード(チップ)を変更しにくかった。これに対し、AUTOSARやLinuxをベースとする最新のECUは、OSベンダーがハードの違いを吸収してくれるため、ハード変更に伴う問題が少ない。ただし、ハードの性能によってタイミング制御や通信などを考慮する必要がある。また、自動車メーカーが開発するビークルOSによっては、AUTOSARやLinuxで割り切れない要素もあり、過去のソフト資産が重視する場合もある」。