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 CMOSイメージセンサー(CIS)の売上高シェアで首位のソニーが、次の稼ぎ頭としてToF(Time of Flight)方式の距離画像センサーに力を入れている。2020年12月開催の半導体素子の学会で「世界最高水準」と言える性能を達成した2つの研究成果を発表した。ともに近い将来の製品化を目指す。ToFセンサーで後発のソニーだが、CISで培った技術を生かして巻き返す考えだ。

 ToFは、主に波長が900nm前後の近赤外のレーザー光を照射し、対象物から反射して戻るまでの時間を算出して、距離を測る方式。ソニーは12月12~18日に開催された「66th International Electron Devices Meeting(IEDM 2020)」で、間接方式(インダイレクトToF、iToF)と直接方式(ダイレクトToF、dToF)向け受光素子について、それぞれ1件ずつ発表した注1)。前編では間接ToF向け受光素子を解説する。

注1)一般に間接ToFは、直接ToFに比べて多画素化しやすく、測距分解能が高めやすい利点がある。ただし、数十m以上といった長距離の測距は苦手だ。一方、直接ToFは100mを超えるような長距離まで測距可能である。ただし、多画素化が難しい。こうした得手不得手から、用途はすみ分けている場合が多い。間接ToFはスマートフォンやロボット用の3次元(3D)センサーやジェスチャー入力センサーとして利用される。直接ToFは、車載LiDAR(Light Detection and Ranging)として研究開発が盛んである。

 ソニー各社の研究グループ(ソニーセミコンダクタソリューションズとソニーセミコンダクタマニュファクチャリング、米Sony Electronics、ベルギーSony Depth Sensing)が開発した間接ToFセンサー向け受光素子の特徴は、画素数が約120万(1280×960)と多く、かつスマートフォンのようなモバイル機器に搭載できる水準に消費電力を下げたことである。フル画素(1280×960画素)、30フレーム/秒(fps)で駆動した場合の消費電力は360mWと低い。スマホで主流の間接ToFセンサーの画素数は、240×160画素(HQVGA)程度である。

ソニーが開発した間接ToFセンサー
ソニーが開発した間接ToFセンサー
(出所:ソニー各社の研究グループとIEDM)
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 100万画素を超える間接ToFセンサーのベンチマークにされるのが、米Microsoft(マイクロソフト)が18年に発表した成果だ。画素数は1024×1024と100万を超えたことで注目を集めた。ただし、消費電力が30fps駆動時で650mWとやや高く、モバイル機器への搭載は難しかった。実際、この成果を基にしたToFセンサーを、「Azure Kinect DK」の距離画像センサーモジュールに採用しており、電源を外部から供給する。

 ソニーは間接ToFセンサーを過去に製品化している。例えば独BMWの運転席周辺機器のジェスチャー操作で採用されている。もともとは、15年に買収したベルギーSoftkinetic Systemsの技術だ。同社の技術を基に、ソニーが得意とする画素部と回路部を積層した裏面照射型にして製品化したという。

 裏面照射型は多画素化に向くため、今回の開発品にも採用した。前述のMicrosoftの100万画素品は、画素部と回路部が同一平面上にある従来型だった。