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 地方の交通機関で、Suicaなどの「交通系ICカード」に代わる非接触キャッシュレス決済手段がじわり広がっている。仕掛けるのはビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)だ。英ロンドンやシンガポールなど主要都市の交通機関での実績を基に、日本でも攻勢をかけている。

「Visaのタッチ決済」が使えることをアピールするみちのりホールディングスのバス
「Visaのタッチ決済」が使えることをアピールするみちのりホールディングスのバス
(出所:みちのりホールディングス)
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 東北・北関東などの交通機関各社を傘下に収めるみちのりホールディングス(HD)は2020年7月、傘下の茨城交通の勝田・東海~東京のバス路線で国内で初めてVisaの非接触クレジットカード決済「Visaのタッチ決済」を導入した。その後、2020年12月までに岩手県北自動車の盛岡~宮古/山田・船越のバス路線「106急行」や、会津乗合自動車の会津若松・福島~仙台空港、福島交通の郡山~福島空港などにも導入した。

 バス用運賃機などを製造する小田原機器製のAndroidタブレットを傘下各社が10~20台ずつ導入した。画面で大人・小児の人数を入力し、Visaのタッチ決済対応のクレジットカードを読み取り機にタッチすれば、運賃決済が完了する。運賃は後日他のカード利用と一緒に請求される。

初期コストは交通系ICカードの数分の1

 タブレットはバスの営業運行時だけ持ち込んで運賃箱に取り付け、バスの車内無線LAN(Wi-Fi)でネット接続して使う。タブレットは1台20万円程度で、バス数台でシェアすることでコストを抑える。交通系ICカードを導入する場合に比べてバス1台当たりの初期コストは数分の1程度で済むという。

 導入の狙いはキャッシュレス決済手段を充実させて顧客の利便性を高める点にある。新型コロナ禍が落ち着いた際には、訪日外国人が自分が持つVisaカードや、Visaのタッチ決済対応のiPhoneやAndroid端末をそのままバスで使える利便性もある。運転士の現金の扱いを減らして業務負荷を減らすことも期待する。

 みちのりHDで情報システム全般を統括する桔川勉ディレクターは「Visaのタッチ決済は現時点では交通系ICカードほど普及していないが、今後カード更新が進むにつれて確実な普及が見込まれる。特に、都市間や空港連絡などの長距離路線の運賃は高額で訪日外国人の利用も見込まれ、Visaのタッチ決済がなじみやすい。コスト面でも地方の中小交通機関にはありがたい」と話す。今後も長距離路線を中心に導入を広げる方針だ。