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 政府のデジタル・ガバメント閣僚会議のワーキンググループは2020年12月に公表した報告書で、教育分野でのマイナンバーカード利用や預貯金口座へのマイナンバーの付番といった法制度の改正案を盛り込んだ。政府がマイナンバー制度をどう変える方針なのか読み解く必要がある。

 日本経済新聞は2020年12月、政府が小中学生の学習履歴や成績をマイナンバーにひも付けてオンラインで管理する仕組みをつくると報じた。報道に対してSNS(交流サイト)では「学習履歴が生涯管理されるのか」といった批判が相次いだ。

 批判を受け、文部科学省は「よくあるご質問(FAQ)」というWebページで「マイナンバーそれ自体と教育データを紐(ひも)付けようとするものではありません」とすぐに否定した。文科省によると、利用を検討しているのはマイナンバー自体ではない。そもそも行政機関がマイナンバーを利用できる用途は法律で限定されている。マイナンバーカードの内蔵ICチップに搭載した公的個人認証サービス(JPKI)を使うものだ。

 利用者がマイナンバーカードのJPKIを使えばオンラインでデータにアクセスする際にIDやパスワードの組み合わせよりも安全に認証できる。文科省は「転学・進学時などの、教育に関する情報の引き継ぎなどにマイナンバーカードを活用することも方策の1つ」として検討段階だと説明している。

 オンラインでデータにアクセスする児童や生徒らが間違いなく本人であると認証する目的でマイナンバーカードを利用するだけならば、本人しかデータを見られない。第三者がデータにアクセスして利用するには、本人がどのデータを第三者に提供するか判断する別の仕組みが必要になる。

 教育分野でマイナンバー制度の活用を盛り込んだのは、デジタル・ガバメント閣僚会議にある「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」である。2020年12月に公表した「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて(案)」という報告書は、ITを活用する「GIGAスクール構想」の学習者ID(識別子)にマイナンバーカードをひも付ける方策を検討するとした。

 報告書は転校時などに教育データを持ち運びできる方策として「2022年度までに検討し、2023年度以降希望する家庭・学校における活用」をするとしている。また、児童や生徒の健康診断データをデジタル化して、2022年度中に本人がマイナポータルで閲覧できる仕組みも盛り込んでいる。

 政府がマイナンバーやマイナンバーカードを活用する制度を新たにつくる場合、誰がどんな目的や条件でどの個人のデータを扱えるようにするのか、分かりやすく説明する必要がある。検討段階であっても説明が不十分であれば誤解や不信感を招きやすいという事実が浮き彫りになった。

口座付番で給付受け取りや相続に利用

 デジタル・ガバメント閣僚会議の報告書は新たにマイナンバー制度を活用する分野を列挙している。その1つが預貯金口座にマイナンバーをひも付けて(付番)、公金受取口座のほか、個人が相続などの際に複数口座を管理できるようにするものだ。政府は2021年2月にも通常国会に新たな法案を提出する。