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 オランダ化学大手のRoyal DSMは、高機能樹脂「PPS(ポリフェニレンサルファイド)」の日本における販売を強化する。電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の電池パックやFC(燃料電池)スタックなどの部品に照準を合わせ、日本の自動車メーカーや部品メーカーに売り込む。鋼材やアルミニウム(Al)合金製部品の代替を目指す。

 厳しくなる環境規制に対応するため、世界の自動車メーカーは車両の電動化を加速させている。英IHS Markitによると、EVとFCVを合わせた世界の電動化比率は2030年に30%まで高まるという。日本でも2027年には、EVとFCVを合わせた電動化比率が約15%になると予測する。

 ただ、DSMの日本法人であるDSMエンジニアリングマテリアルズでコマーシャルディレクターを務める高雄良平氏は、「菅義偉政権によるカーボンニュートラル(炭素中立)宣言などもあり、EVとFCVを合わせた日本の電動化比率は、さらに高まる可能性がある」と指摘する(図1)。

高雄良平氏
図1 DSMエンジニアリングマテリアルズの高雄良平氏
(出所:DSM)
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 こうした状況を受けてDSMは日本で、EVやFCVの電動パワートレーン部品などに向けたPPS樹脂注)の販売を強化する。具体的には、(1)電池パックの熱管理システム、(2)充電関連の高電圧・高電流システム、(3)FCスタック──向けの部品である。

注)PPS樹脂は結晶性の熱可塑性樹脂であり、耐熱性や耐摩耗性、耐薬品性などに優れる。「高温下での機械的物性の低下が少ない」「流動性が高いため成形性に優れる」といった特徴もある。ただ、成形時の結晶化度が物性に大きく影響するため、成形条件の精密な管理が必要になる。

 電動車両の電池パックは、限られた温度領域(20~30度)を外れると性能が低下する。その熱管理システムの部品は、長時間にわたって冷却材にさらされる。パイプなどの冷却用部品は現在、Al合金やゴムなどが使われている場合が多いが、「樹脂化による軽量化が求められている」(高雄氏)という。

 ただ、これらの部品を樹脂化する場合、射出成形時の「ウエルドライン」の発生による成形不良を防ぐ必要がある。ウエルドラインとは、金型内で溶融樹脂の合流部分に発生する線状の跡のことで、強度低下の原因となる。DSMのPPS樹脂は、冷却水(水とグリコールの混合液)に長時間さらされた後のウエルドラインの引っ張り強度が従来品に比べて85%、破断伸びが同50%高い(図2)。

ウエルドラインの強度と破断伸びの比較
図2 ウエルドラインの強度と破断伸びの比較
(出所:DSM)
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