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 霞が関の中央省庁の間でデジタル人材の争奪戦が激しさを増している。金融庁は2021年1月7日、各種のデジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクトに取り組む人材の公募を始めた。農林水産省、9月に発足予定のデジタル庁に続きデジタル人材の公募に名乗りを上げた格好だ。

 金融庁が求めるのは高度な金融実務の経験とスキルを兼ね備えた即戦力人材。条件に合う人材の場合、年収は下がる公算が大きい。政府による行政デジタル化の大号令という追い風も味方に、望む人材を獲得できるか。

金融庁は「金融DX」を掲げ行政手続きや金融機関の電子決済推進などに取り組む
金融庁は「金融DX」を掲げ行政手続きや金融機関の電子決済推進などに取り組む
(撮影:日経クロステック、以下同)
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 新たに課長補佐相当の3つの職種を公募する。「DX推進ビジネスデザイナー/アーキテクト」は金融庁の業務のデジタル変革を「リーダーとして率いる人材」(稲田拓司総合政策局秘書課情報企画調整官)である。具体的には開発するシステムの企画や要件定義、ITベンダーやプロジェクトのマネジメントを担う。「金融DX with Security推進アナリスト」は金融庁におけるセキュリティー対策の現場リーダーだ。各種対策の企画、立案、リスク診断、セキュリティーポリシーの策定とそれに基づくルール整備などを担う。これら2職種はともに金融庁内の業務変革を担当する。

 外部金融機関のITガバナンスやシステムリスク管理の体制を検査、指導する検査官を担うのが「ITモニタリングスペシャリスト」だ。主な役割は金融機関のITガバナンス体制の構築状況やシステム統合におけるリスク管理体制、セキュリティー管理体制などを対象にしたモニタリングや指導である。「従来は弁護士や会計士の経験者が担っていた業務について、エンジニア経験に基づく専門知識を持ってITガバナンス体制を目利きしてほしい」(稲田氏)。

 公募期間は2021年1月7日から2月3日までで、採用予定人数は各職種1~2人。原則として2年の任期付き職員とする。人材サービス大手ビズリーチのサービスを使って公募する。

比率わずか「8.8%」、全行政手続きをオンライン化へ

 「金融DXを早急に進めるため、民間を含めたデジタル人材に広くアプローチしたい」。稲田氏は公募へこう意欲を示す。特に注力する分野の1つが、金融機関が申請する行政手続きのオンライン化である。

 実は金融庁の全行政手続きは年間120万件。件数ベースでみると、そのうち85%は既にオンラインで受け付けている。ただ、手続きの種類数ベースでみると、オンラインで申請できる比率は8.8%にすぎない。金融庁の行政手続きの中には1年に1~2回あるかないかという申請もあるが、それらも法律の定めがある限り手続きを受け付けられるようにしておく必要がある。将来、当該の法律に沿った申請手続きが必要になる場面に備えておくためだ。

 例えば「長期信用銀行法」は文字通り長期信用銀行を設立するための根拠法だ。現在は同法に基づく銀行は存在しないが法律は残っており、申請手続きも用意しておかなければならない。「ビジネスモデルとして成立するかはさておき、長期信用銀行を設立しようと考える金融機関の登場に備えるため」(稲田氏)である。結果として、ほとんど使われないにも関わらず申請を受け付けるための業務プロセスや書類の種類が積み上がっているという。

「RPAなどによる庁内の働き方改革への貢献も期待している」と話す稲田情報企画調整官
「RPAなどによる庁内の働き方改革への貢献も期待している」と話す稲田情報企画調整官
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