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 10年間清掃不要をうたう「オイルスマッシャー」機能を持つ台所用換気扇(レンジフード)などを手掛ける富士工業(相模原市)が本社工場を公開した(図1)。同社の主力製品をコア部品から一貫で生産する工場で、生産設備のほとんどを自社で開発している。清掃不要を実現する独自の回転フィルターの製造装置や海外製品に負けないコストを実現する自動化設備など、同社工場の秘密を探っていこう。

図1 富士工業の本社工場
図1 富士工業の本社工場
(出所:日経クロステック)
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 オイルスマッシャー機能は空気を吸い出すシロッコファンなどレンジフード内部に付着する油汚れを一般的な製品の1/10に低減する(図2)。このため通常は年1回程度は必要なレンジフード内部の清掃が10年に1度で済む。レンジフード製品の設計上の標準使用期間は10年なので、一度も清掃せずとも寿命まで使えるとうたう。

図2 清掃不要のレンジフード
図2 清掃不要のレンジフード
(出所:富士ホールディングス)
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 汚れを減らす秘密はシロッコファンの手前にある円板状の金属製回転フィルターにある(図3)。円板フィルターは厚さ0.8mmのステンレス鋼製で多数の長いスリット穴が開いている。この円板を高速で回転させ、油の粒子(オイルミスト)をはじき飛ばして空気だけをシロッコファンの方へ通す。円板フィルターは3カ月に1度程度清掃する必要があるが、表面には親水性コートを施してあり、油汚れがあってもその下に水が入り込み、浮かして流してしまえる。さらに2020年8月に発売した新製品では、この円板フィルターを工具なしで取り外して洗えるように改良した。

図3 円板にスリットを開けたフィルター
図3 円板にスリットを開けたフィルター
これが回転して油の粒子をはじき飛ばす。(出所:日経クロステック)
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 本社工場は、この円板フィルターや着脱機構の部品加工から製品組み立てまでを手掛けている。中でも円板フィルターは独自製法を自ら開発した。当初は外注を検討したが「取引先のプレス専業メーカーに依頼したが、無理だとみんな断られてしまった」(ものづくり革新本部技術部部長の澤口剛氏)からだ。

1回のプレスではスリットを全部開けられない

 円板フィルターは開けるべきスリット穴の数が多く、スリットの輪郭の合計延長が長大になるため、必要なプレス力がばく大になる。そのため一度のプレスでは打ち抜けず、少しずつスリット穴を開けていていくしかない。しかも、隣り合うスリットは同時には開けられない。パンチで打ち抜くときにスリットの両側を押さえないと良好な形状を得られないが、パンチの間隔が狭くてスリット間の材料を押さえる仕組みを金型に作り込めないためだ。とはいえ、1本ずつ開けていくのでは時間がかかりすぎる。

 同時に開けるスリットの場所や本数をいろいろと変えてみて、スリットを4本ずつ開けていく方法に落ち着いた。「4本ずつ、互いに90度ずつ離れたスリットを開ける方法が円板全体の平面度の確保も含めて最も良い。6本ずつとか8本ずつとかいろいろ試行錯誤した結果の結論」(澤口氏)。パンチを上下させつつ、材料を少しずつ回して全てのスリットを開けていく

* 従ってスリットの本数は4の倍数である。

 「スリットの縁は、丸くダレないようにする必要がある。オイルミストを捉えるのがスリット穴の内壁であるため、そこが平面であるのが重要。丸く曲面になっているとオイルミストの除去機能が低下する」(技術部次長の鈴木武利氏)。とはいえスリットの縁は鋭敏なほど良いわけではなく「手が触れても切れない程度」(鈴木氏)にする必要がある。

 こうして確立した生産方式を、多関節ロボットとプレス機を組み合わせた自動化設備で実行している(図4)。ロボットがプレス機への材料の投入と取り出しを自動で実行する。

図4 円板フィルターの自動化生産設備
図4 円板フィルターの自動化生産設備
ロボットとプレス機を組み合わせた。(出所:日経クロステック)
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