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 NTTドコモは2020年末までに、時速290キロメートルの高速移動体で誤差10センチメートル程度の高精度で測位する実験に成功した。自動運転の基礎技術として、高速移動するクルマや列車、ドローンなどの自己位置測位に生かす方向で開発を進める方針だ。

 NTTドコモは既に「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」を商用提供している。GNSSとは、GPS(全地球測位システム)や準天頂衛星(QZSS、みちびき)など、人工衛星が発信する電波を地上のアンテナで受信して自己の現在位置を検知する仕組みの総称だ。導入事例としては、建機大手のコマツが同社の推進する「スマートコンストラクション」で、工事現場などにある建機の位置を知るために採用している。

 ただし、現行の技術は建機のように移動速度が遅い物体にしか適用できない。NTTドコモの安川真平モビリティビジネス推進室戦略企画主査は「建機より速く動くモノで高精度測位ができれば応用範囲が広がるはずだと考えた」と説明する。

鈴鹿サーキットなどで実験

シリーズチャンピオン獲得を決め、5号車の前でポーズをとる山本尚貴選手(2020年12月20日、静岡県小山町の富士スピードウェイ)
シリーズチャンピオン獲得を決め、5号車の前でポーズをとる山本尚貴選手(2020年12月20日、静岡県小山町の富士スピードウェイ)
(撮影:日経クロステック)
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 高速移動する物体で実験すれば課題も見えやすい。そこでNTTドコモが実験の舞台に選んだのは、自動車レースの全日本スーパーフォーミュラ選手権だ。2020年8月から12月にかけて、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)や富士スピードウェイ(静岡県小山町)など全国のサーキットで7戦が開催された。日本最高峰のフォーミュラカー(スピードを重視しタイヤとドライバーがむき出しになった形状の自動車)によるレースだ。

 NTTドコモはスーパーフォーミュラの「DOCOMO TEAM DANDELION RACING(ドコモ チーム ダンディライアン レーシング)」のメインスポンサーを務める。同チームの2台のうち、5号車山本尚貴選手は全レースの合計獲得ポイントで1位になり、シリーズチャンピオンを獲得した。NTTドコモは強豪チームに協賛するだけではなく、通信に関わる様々な実験の場として活用している。

車体に特殊なアンテナを搭載

 2020年シーズンは山本選手の5号車と福住仁嶺選手の6号車に測位機器を搭載した。車体前方にはGNSSアンテナを埋め込んだ。車体に使われる炭素繊維は電波を遮るため、アンテナ部分だけはガラス繊維製にしている。

GNSSアンテナを車体から取り出したところ
GNSSアンテナを車体から取り出したところ
(撮影:日経クロステック)
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GNSSアンテナを収納したところ。カバーは電波を通すガラス繊維製
GNSSアンテナを収納したところ。カバーは電波を通すガラス繊維製
(撮影:日経クロステック)
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 屋根のない運転席前部にはLTEアンテナを搭載した。GNSSの測位データをLTEの電波で補正するために使う。ただし、スマートフォンなどに使われる一般的な超小型アンテナでは高速走行時に通信が不安定になりやすいため、比較的大型のアンテナを使う。実験開始当初はアンテナ1個だったが、精度が上がらなかったため、2個に増やして通信の安定性を高めた。

ハンドルの前に搭載したLTEアンテナ
ハンドルの前に搭載したLTEアンテナ
(撮影:日経クロステック)
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ハンドルを外したところ。「LTEアンテナ」と書いた青いラベルが貼ってある
ハンドルを外したところ。「LTEアンテナ」と書いた青いラベルが貼ってある
(撮影:日経クロステック)
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