夜間にロボットが店内を自律走行し、商品棚の在庫切れや売価違いなどをチェック。店員は翌朝、ロボットのリポートを参考に効率的に商品棚を整理整頓――。人手不足が深刻な小売業界において、救世主となる可能性を秘めたロボットが登場した。
東京・錦糸町駅にほど近い大型スーパー。ここでは閉店後、暗くなった店内をカメラやセンサー、AIを搭載したロボットがぐるりと巡回する。撮影した商品棚の画像を解析して、在庫切れや値札の表記ミスなどを店員に知らせるためだ。同店で活躍しているのは、日本ユニシスが2020年12月に提供を始めた小売業向け人工知能(AI)ロボット「RASFOR(ラスフォー)」である。
「単調な作業をロボットが代替することで、小売業の労働力不足を解消する狙いがある」。日本ユニシスの大熊義久デジタルアクセラレーション戦略本部事業開発部第一グループリーダーはこう語る。
RASFORは「カスミ」「マルエツ」や関東エリアの「マックスバリュ」などを展開する食品スーパー大手のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)の協力を得て開発した。村田機械の自律走行技術やニコンシステムの撮影技術を取り入れ、画像解析はオープンソースソフトウエア(OSS)を使い、日本ユニシス独自のアルゴリズムを組んだ。
すでに一部店舗で利用を始めたUSMHでは、開店前の商品棚の確認作業を少なくとも30~60分削減する効果を得ているという。「各機能の精度にばらつきがあるものの、高いものは90%以上で安定している」。USMHの磯哲章デジタル本部部長アナリティクス担当は手応えを口にする。
利用料金は月額数十万円。日本ユニシスの試算によると、RASFORの導入によって労働力不足の解消などにつながり、月50万円程度の費用削減効果を生むという。
同様のロボットは米大手小売業で導入が進んでいるが、「海外製のロボットは通路が狭い日本の店舗には合わなかったため、国産ロボットの開発に踏み切った」と大熊氏は説明する。日本ユニシスによると、小売業に特有の業務を代行するロボットが商品として販売されるのは国内で初めてという。USMHは2022年2月期に、カスミの大型店舗を中心に5~10店舗へRASFORの導入を計画しているほか、マルエツやマックスバリュ関東の店舗への導入も検討中だ。これらを含め、日本ユニシスは2023年3月期までの累計で300台の導入を目指す。