全1956文字
PR

 2021年が明けると、「半導体不足で自動車の生産が予定通りにできない/減産せざるを得ない」という報道がやたらと増えてきた。新型コロナウイルスのパンデミックの影響で20年に自動車需要は落ち込み、20年末ごろにようやく上向きになったという状況にもかかわらず、今年(21年)になってにわかに増産体制に入ったかのようだ。車載半導体は本当に不足しているのか、車載半導体大手のルネサス エレクロニクスの幹部に聞いてみた。同社の売上高の半分は車載半導体である。

 オートモーティブソリューション事業本部 副事業本部長 ヴァイスプレジデントの片岡 健氏は、記者の質問にこう答えた。「さまざまな分野で半導体需要は旺盛であり、品薄なケースがあるかもしれない。ただし、車載半導体だけが極端に足りないという状況ではない」(同氏)。記者のこれまでの経験から言えば、日本メーカーの場合、本当に足りていなければ、記者への答えの第一声は「顧客に迷惑をかけている。我々としては……」のようなお詫(わ)び(言い訳?)となる。今回はそうではなかった。

片岡 健氏
片岡 健氏
(出所:ルネサス)
[画像のクリックで拡大表示]

 新型コロナウイルスのパンデミックによって自動車業界は逆風を受けているが、半導体業界にはむしろ追い風だ。例えば、テレワークへの移行に伴い、PC向けやデータセンター向けなどの半導体の需要が旺盛になり、半導体世界売上は10カ月連続で前年同月よりも増加している*1。世界半導体市場統計(World Semiconductor Trade Statistics、WSTS)によれば、20年通年の半導体世界売上は前年比で5.1%増加すると見込む。

工場稼働率が上昇

 世界需要の高まりに歩調を合わせて、ルネサスの工場稼働率は上がっている。下図は同社が20年10月29日にオンラインで行った20年第3四半期決算発表会で見せた資料である*2。20年第2四半期を底に稼働率は上昇に転じている。この発表会で、同社の柴田英利氏(代表取締役社長 兼 CEO)は「第4四半期の稼働率はさらに10ポイントほど上昇する」と述べている(なお、第4四半期の稼働率は、21年2月10日開催予定の20年通年決算発表会で正式発表される)。

ルネサス自社工場の前工程製造ラインの稼働率
ルネサス自社工場の前工程製造ラインの稼働率
(出所:ルネサスのスライド)
[画像のクリックで拡大表示]

 ルネサスの自社工場は40nmまでで、それ以上微細なプロセスで造るチップはファンドリーに委託している。その状況に関して、柴田氏は「ルネサスとしてはファンドリーの枠の確保に努力している」と説明しており、すでに昨年(20年)10月の時点で、ファウンドリーの稼働率は相当に高いことがうかがえる。さらに同氏は「PMIC(Power Management Integrated Circuit)を中心にして、デジタルよりもアナログICのほうがタイト(不足気味)」と述べている。PMICは、SDGs(Sustainable Development Goals)志向の電気自動車の効率向上で重要な役割を担う半導体である。

 今回、話を聞いた片岡氏は、ファンドリーの状況に関して、次のように話した。「(スマホ向けSoCやハイエンドマイクロプロセッサーを製造する)最先端プロセスよりも、ボリュームゾーンのICに向けたプロセスのほうが厳しい状況だと聞いている。われわれは自社工場があるのでそれほどでもないが、そうでないところ(すなわち、ファブレス)は、製造ラインの確保に苦戦しているようだ」。一般に車載半導体は品質保証や信頼性確保の観点から最先端プロセスでは製造されない。すなわち、多くのICの半導体と製造ラインの確保で競合する。