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 希少金属のコバルト(Co)を使わないリチウムイオン電池の開発が熱を帯びてきた。先陣を切る構えを見せるのがパナソニックで、「CES 2021」で実用化の時期を明言。競合の韓国LG Chem(LG化学)も、米GMとの共同開発によって「Coフリー」を目指していく意向を示した。火花が散る背景にあるのは、Coフリーに取り組む理由が変わってきたことだ。

 「2~3年後にはCoを使わない高容量電池を投入する。これにより、当社は電池業界のリーディングカンパニーになる」――。決意を口にしたのは、パナソニックの電池技術・製造部門でトップを務める渡辺庄一郎氏である。同氏はCES 2021のパネルディスカッションに登壇し、Coフリー電池の開発動向を説明した(図1)。

図1 パナソニックの渡辺庄一郎氏
図1 パナソニックの渡辺庄一郎氏
電池技術・製造部門でトップを務める。オンライン開催されたCES 2021のパネルディスカッションに登壇した。(出所:CESの映像)
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 パナソニックが1994年に量産を開始した同社初のリチウムイオン電池の正極材料はコバルト酸リチウム(LiCoO2)だった。2006年に正極材料にニッケル(Ni)とアルミニウム(Al)を加えた、いわゆるNCA系の電池を実用化し、Coの含有率を94年の電池と比べて15%まで低減した。パナソニックはその後も改良を続け、現在量産中の電池のCo含有率は「5%以下」(渡辺氏)と小さい(図2)。

図2 パナソニックのリチウムイオン電池
図2 パナソニックのリチウムイオン電池
テスラの電気自動車(EV)「モデル3」に搭載している「2170」セル。(撮影:日経Automotive)
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 リチウムイオン電池の安定性や信頼性を確保する上で不可欠とされてきたCo。電池メーカーや自動車メーカーは長年その使用量の削減に取り組んできたが、主な目的はコストの低減だった。Coは電池を構成する材料の中で最も高価なものの1つとされる。しかも、紛争が続くコンゴ民主共和国が主要な産出国で、供給が安定せず価格上昇が続いている。

 コスト低減という永遠の課題に加えて、ここへきてCoフリーを目指す新たな理由が大きくなってきた。電池・自動車業界が強く意識しているのが、ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)の視点である。

 コンゴ民主共和国でのCoの採掘には児童が動員されているという指摘があり、人権問題があるCoの利用には批判の声が上がっている。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降は特に、ESG評価の高い企業のみに投資を実施する動きが目立つ。資金を安定調達する上でも、Coフリーを目指すことが重要になってきた。

テスラの新型電池はCoフリーに

 こうした投資環境の変化を受けて、例えば米Tesla(テスラ)は2020年9月に開いた電池事業の説明会「Battery Day(バッテリーデー)」でCoフリーの正極材料の開発を進めていることを明かした。Coの代わりにNiの比率を高めていく方針である。

 同材料は、テスラが内製を目指す新型電池セル「4680」に搭載する意向だ。電池開発でテスラと二人三脚を続けてきたパナソニックは4680セルについて、「既に開発を初めており、テスラとも目標を共有している」(渡辺氏)という。