カシオ計算機が民生デジタルカメラ事業で培った画像処理技術を生かし、監視やFA(工場の自動化)での物体認識などに使えるAI(人工知能)カメラに挑戦する。ルネサスエレクトロニクスと共同開発したマイクロプロセッサー(MPU)を用いることで、消費電力とコストを大幅に抑えられるという。競合他社の「4分の1から3分の1程度の価格」を実現すると主張し、2021年秋ごろの販売を予定する(図1、2)。
深層学習の一種である物体認識用CNN(畳み込みニューラルネットワーク)をカメラ内で実行するAIカメラの需要が急拡大しており、カシオは24年に現在の80倍となる1兆2000億円規模に達すると見込む。カシオはそのうち「数百億円の売り上げを目指す」(同社事業開発センターイメージング開発統括部長の松原直也氏)という。
カシオのAIカメラで低消費電力と低コストを両立できるのは、競合他社のようにGPUでAI処理するのではなく、ルネサスと共同開発したMPU「RZ/V2M」を利用することが大きい。AI処理に特化したアクセラレーターに加えて、カシオがデジカメで開発してきた映像処理プロセッサー(ISP)技術を搭載する(図3)。
カシオによると、公開されている学習済みCNN「Tiny YOLO v2」をMPUで実行したところ、一般的なGPUに比べて単位電力当たりのAI推論処理量が約4倍になったという(図4)。内訳は、消費電力が10Wから3Wと約3分の1に抑えられた一方で、処理能力が1.3倍向上した。