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 政府は領収書など税務関連書類を電子スキャンして保存する要件を大幅に緩和する。導入前に税務署長へ届け出る制度や、紙の原本とスキャン画像を突き合わせて確認する定期検査など、これまで導入のハードルになっていた義務をほぼ廃止する。必要なIT設備や体制が準備できていない中小企業なども取り組みやすくし、経理と税務のデジタル化の裾野を大きく広げる狙いだ。

 関係者からは「中小企業のほかスキャン保存をためらっていた大企業から見ても、やらない理由がなくなるほどの大きな規制緩和だ」との声も出ている。規制緩和の代わりに強化したのは、データ改ざんなどで不正が発覚した場合に課される重加算税の10%加算だ。一律の規制や技術の義務付けではなく、懲罰によって不正を防止する方向へと政策を転換した形である。

やらない理由は「紙よりも負担の大きさ」

 今回の規制緩和の方針は、財務省が2020年12月下旬に公表した2021年度の税制大綱で示した。政府は2021年1月18日に開会した通常国会に、規制緩和の内容を盛り込んだ「電子帳簿保存法」の改正案を提出する。2021年内に改正法が施行されれば、スキャン保存制度などの改正は、2022年1月1日以降に保存する書類から適用される予定だ。

 電子帳簿保存法は過去に何度か改正され、紙の書類のスキャン保存や、紙を経ない電子データ化の要件が緩和されてきた。領収書や請求書などのスキャン保存がようやく実用的になったとされるのは、金額が3万円以上のケースにも電子化の対象を広げた2015年の法改正からとされる。

 しかし普及は極めて低調だ。国税庁の統計によると、170万社とされる日本の法人数に対し、2019年度末におけるスキャン保存の承認件数(導入法人数)は4041件にとどまる。中小企業だけでなく大企業でも普及が低迷していたのが実態だ。

中小企業が電子帳簿保存法に基づく税務書類スキャン保存を導入しない理由。新経済連盟が調査した
中小企業が電子帳簿保存法に基づく税務書類スキャン保存を導入しない理由。新経済連盟が調査した
(出所:新経済連盟)
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 新興企業が多く所属する新経済連盟が2020年8月に中小企業を対象に実施した調査では、スキャン保存を検討しながら導入しなかった理由として、現行制度の負担の重さが数多く挙がった。「税務署長への承認手続きの手間・時間がかかる」「制度が複雑」「定期検査が終わるまで紙を保存する必要がある」「紙より保存要件が厳しいため税務調査が不安」といった理由だ。

 今回の規制緩和は、これらの導入しない理由をほぼ一掃する内容だ。まずスキャン保存の導入前に税務署長へ届け出て承認を得る制度は廃止する。法改正では、紙のスキャン保存に加えて、税務に使う帳簿などを紙に出力せず電子データのまま保管できる会計・経理ソフトについても事前の承認制度を廃止する。これにより税務の全面的なデジタル化は企業が決断すればいつでも始められるようになる。

電子帳簿保存法の改正案に盛り込む規制緩和の概要。経済産業省が財務省に要望を出していた
電子帳簿保存法の改正案に盛り込む規制緩和の概要。経済産業省が財務省に要望を出していた
(出所:経済産業省)
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