全2420文字
PR

 振り返れば2020年の国内パソコン市場は、Windows 7からWindows 10への切り替え需要に沸いた2019年の反動減を跳ね返す活況に終わった。その要因には、新型コロナウイルス禍に伴い在宅勤務に切り替えるビジネスパーソンが増加したことや、小中学生に1人1台の端末を持たせる政府の「GIGAスクール構想」がある。

 2021年も上半期はその勢いが持続しそうだ。だが、業界関係者によっては中長期的な伸び悩みを予想。パソコンメーカー各社は商品開発やマーケティングで工夫しつつ、同時に足元の底堅さがいずれ息切れする事態にも身構える。

2020年度のモバイルノート出荷台数、8カ月間で前年度の1.8倍に

 電子情報技術産業協会(JEITA)のパソコン国内出荷統計では、1回目の緊急事態宣言が出た2020年4月ごろから異変が見られる。統計に参加したパソコンメーカー8社のデスクトップパソコンの出荷がいっとき月10万台を切るなど低水準で推移する一方で、ノートパソコンは堅調に推移した。

電子情報技術産業協会(JEITA)のPC出荷統計による、統計参加8社の出荷台数の推移。2020年夏以降、モバイルノートの出荷台数が急増している
電子情報技術産業協会(JEITA)のPC出荷統計による、統計参加8社の出荷台数の推移。2020年夏以降、モバイルノートの出荷台数が急増している
(出所:JEITA)
[画像のクリックで拡大表示]

 特に需要増が著しかったのはモバイルノートだ。2020年8月ごろから出荷台数が目に見えて増えており、2020年9月には単月で81万6000台を記録。その後も平年を大幅に超える出荷台数で推移している。

 年度で比較すると、2020年度は4~11月の8カ月分しか発表されていないにもかかわらず、モバイルノートの累計出荷台数は294万台と2019年度(累計165万6000台)に対して約1.8倍に急増している。

 もともと2020年のパソコン市場は低迷が予想されていた。2020年1月のWindows 7のサポート終了を見越して、2019年に大量の買い替え需要が発生したためだ。しかし2020年4月以降、緊急事態宣言の発令に伴い在宅勤務やオンライン授業の環境を急きょ整えるべくパソコンを購入するユーザーが相次いだ。

 2020年夏以降、メーカー各社が増産体制を整えたことやGIGAスクール構想による各自治体へのパソコンの納品が始まったことなどで出荷増に拍車がかかったとみられる。GIGAスクール構想ではおおむね600万~700万台程度の端末需要が創出される見通しで、タブレット端末と市場を分け合うものの数百万台のモバイルノートが新たに出荷されることになる。

 Windows 7サポート終了特需の反動を恐れていたパソコンメーカー各社にとって、GIGAスクール特需は恵みの雨となった格好だ。だが、「恵み」というにはいささか雨が強すぎる感もある。というのも、GIGAスクール構想では、2021年度の導入計画が2020年度に前倒しされた分もあり、2021年3月までの納品を指定する自治体が多いとみられるからだ。以前から例年3月は家庭向け・法人向けともパソコン商戦のピークでもあり、短期的には需要が供給を大幅に上回りそうだ。

 「個々のメーカーだけでなく市場全体、世界規模でパソコンの需要が伸びているのは事実。2021年の上半期はアンバランスな状況が続いていくとみている」。日本HPでパソコン事業を統括する九嶋俊一専務執行役員はこう分析する。「サプライヤーと協力して、できるだけ市場に商品を届けていく。GIGAスクール向け納品分についても尽力する」(久嶋専務執行役員)。