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 電気自動車(EV)の弱点とされているのが、エンジン車に対する1充填/充電当たりの航続距離の短さだ。そのため、EVを市場に投入するメーカーは、その距離を延長しようとさまざまな取り組みを進めてきた。そして、昨今は高級EVではなく、大衆EVでも50kWh前後の容量の電池を搭載し、航続距離はWLTPモードで300kmを超えるようになってきている。

 そうした中、マツダが欧州で2020年9月に、日本では21年1月28日に発売したSUV(多目的スポーツ車)タイプのEV「MX-30 EV MODEL」は、搭載する電池容量を35.5kWhに抑えた(図1、2)。そのため、航続距離は欧州のWLTPモードで約200km、日本のWLTCモードで256kmと短めだ。

図1 マツダが日本で21年1月に発売したEV「MX-30 EV MODEL」
図1 マツダが日本で21年1月に発売したEV「MX-30 EV MODEL」
(出所:マツダ)
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図2 MX-30 EV MODELの電池パック
図2 MX-30 EV MODELの電池パック
35.5kWhの電池を搭載する。(出所:マツダ)
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 マツダはなぜ、電池容量を35.5kWhに設定したのか――。この点について、同社執行役員の工藤秀俊氏は次のように説明する(図3)。「欧州での二酸化炭素(CO2)排出量がディーゼル車以下となるように設定した」

図3 マツダ執行役員の工藤秀俊氏
図3 マツダ執行役員の工藤秀俊氏
オンライン事前取材会の画面をキャプチャーした。
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 同社では車両は日本で製造し、欧州で使うことを想定して、ライフサイクルを通じたCO2排出量がディーゼル車以下となるように電池容量を設定した。すなわち、CO2排出量を製造時は日本の、走行時は欧州の電源ミックスから計算している。

 その上で、同社は走行距離16万kmで電池交換が必要になると想定。35.5kWhに電池容量を抑えると、当初はディーゼル車を上回っていたライフサイクルのCO2排出量が、途中でディーゼル車を下回る(図4)。同図から推定すると、走行距離が8万~10万kmあたりでライフサイクルのCO2排出量は逆転する。

図4 EVとディーゼル車に関するライフサイクルのCO2排出量
図4 EVとディーゼル車に関するライフサイクルのCO2排出量
車両を日本で製造し欧州で使う場合。欧州の電源ミックスは16年のものを使用。電池容量を35.5kWhとした場合、EVは電池交換前にライフサイクルのCO2排出量でディーゼル車を下回る。(出所:マツダ)
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 航続距離の短さを気にする顧客はもちろんいる。同社はそうした顧客に対しては、簡易ハイブリッド車(MHEV)と、22年に投入を予定するロータリーエンジンをレンジエクステンダーとして使うEVで対応する考えだ。