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 政府・自治体が「脱ハンコ」に向けた動きを加速している。新型コロナウイルス禍で押印のための出社がリモートワーク推進の障壁となっている背景もあり、民間企業ではこれに先行して電子署名が急速に広がっている。

 こうしたなか、電子署名サービス大手の弁護士ドットコムは2021年1月21日、自社サービス「クラウドサイン」の新戦略を発表した。マイナンバーカードを使って本人確認能力を強化するサービスを2021年夏以降に投入する。

 橘大地取締役クラウドサイン事業本部長は「日本の印鑑制度が始まったのは明治時代のことだ。当時の政府は、国民の識字率が低かったことを踏まえて、諸外国のような筆記署名ではなく印鑑を制度化し、印鑑登録などの仕組みも整備した。それは成功し、100年以上にわたって日本の社会インフラとして機能してきた。我々は印鑑文化に敬意を払いながら、今後100年使える新しい契約の形をつくりたい」と力を込めた。

「事業者署名型」を推してきたが限界も

 クラウドサインがこれまで提供してきたのは、「事業者署名型」と呼ばれる電子署名だ。契約当事者の間にクラウドサインが入り、双方の電子署名がクラウドサインのサーバー上にそろった時点で契約成立と見なす。

「当事者署名型」と「事業者署名型」の違い。クラウドサインの既存サービスは事業者署名型で提供
「当事者署名型」と「事業者署名型」の違い。クラウドサインの既存サービスは事業者署名型で提供
(出所:弁護士ドットコム)
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 2001年施行の電子署名法は、これとは違う「当事者署名型」電子署名を規定している。契約当事者は第三者の認証局から電子証明書を取得し、これを使って電子署名をする。手続きが煩雑なためあまり普及せず、結局ハンコが重宝されてきた。クラウドサインはそこに目を付け、電子署名法に準拠しない簡素な事業者署名型で事業を拡大してきた。導入社数は10万社を超える。

 クラウドサインの事業者署名型電子署名は、印鑑で言えば「認印」レベルだと言える。クラウドサイン以外の第三者の裏付けがない電子署名を使うため、証拠能力は当事者署名型より弱い。1個の認印を家族や社内で使い回せるのと同様で、本人確認能力も低い。「高額な不動産売買のような契約でクラウドサインを使うのは抵抗があるという顧客企業の声もあった」(橘取締役)。