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 デンソーの燃料ポンプの品質問題が収束をみせない。自動車業界関係者への取材により、中国市場においてホンダが約109万台をリコールすることが判明。マツダも海外市場で約25万台のリコールを計上していた。いずれもデンソー製燃料ポンプの不具合がリコールの原因であることが分かった。

品質問題に苦しむ“部品の巨人”デンソー
品質問題に苦しむ“部品の巨人”デンソー
ホンダ車の約109万台の追加リコールとマツダ車の約25万台のリコール分の燃料ポンプが返品された。不具合品は合計で約879万個まで積み上がった。巨人はギリシャ神話の登場人物などをモチーフに作画した。(イラスト:穐山 里実)
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 問題の燃料ポンプで、ホンダは既に世界で137万台のリコールを届け出ているが、今回はこれとは別の追加リコールとなる。これにより、ホンダ車のリコールは合計で約246万台となった。これにマツダ車と、既に判明している他の自動車メーカーの分を合わせて、デンソー製燃料ポンプの不具合が原因のリコールは、世界で約879万台を数える。

 しかも、リコール台数がこれで打ち止めとは言い切れない。「中国市場以外については精査中」(ホンダ)だ。今後、同社が他の市場の分を追加したり、同社以外の自動車メーカーが市場や車種の対象を広げたりして、リコール台数がさらに増える可能性は残る。

 ホンダの追加リコールの内訳は、広汽ホンダが生産した「シティ」「オデッセイ」「クライダー」など53.6万台と、東風ホンダが造った「グレイズ」「ジーニア」「シビック」など55.2万台だ。一方、マツダのリコールは、東アジアや東南アジア、その他の地域(中近東、アフリカ、中米、カリブ海)の市場で販売した、「MAZDA2」「CX-5(旧型・現行)」「MX-5」などである。

問題のある燃料ポンプを搭載したホンダとマツダのリコール対象車
問題のある燃料ポンプを搭載したホンダとマツダのリコール対象車
ホンダは中国市場で販売するクライダー(左上)やグレイズ(右上)などを追加でリコールした。マツダは、MAZDA2(左下)やCX-5(右下)などをリコールした。(出所:ホンダ、マツダ)
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 これらのクルマが搭載した低圧燃料ポンプに品質不具合があった。具体的には、樹脂製インペラ(羽根車)が変形し、ポンプケースと接触して作動不良を起こして、走行中にエンジンを停止させる恐れがある。各種専門家への取材によれば、強化材を含有したポリフェニレンスルフィド(PPS)製インペラの結晶化度が低過ぎて密度が低下。その隙間に燃料(ガソリン)が浸入して膨潤したことが品質不具合を招いた原因とみられる。

なぜリコールは追加で増えるのか

 同じ品質問題を抱えた燃料ポンプを原因とするリコールを追加で届け出たのは、トヨタ自動車とホンダの2社だ。トヨタ自動車は2020年3月に322万台のリコールを届け出た後、同年10月に266万台のリコールを追加し、世界で合計588万台のリコールを計上した。一方、ホンダは同年5月に137万台のリコールを届け出た後、今回の約109万台分は同年12月末に追加している。

 デンソー製燃料ポンプに不具合があることは明らかになっており、それを搭載した車種についても自動車メーカーは当然、識別できているはずだ。「現在はトレーサビリティーがしっかりしており、いつどこで造られた部品かを把握していない自動車メーカーはない」(開発設計の専門家)。にもかかわらず、なぜ自動車メーカーは不具合のある燃料ポンプを搭載したクルマの全てを一度にリコールとして届け出ず、追加していくのか。

 この疑問にホンダは、「市場クレーム(市場からの品質に関するクレーム)や問い合わせを受けて予測の精度を高めた結果、リコール対象の範囲を追加することになった」と回答する。これについて、品質保証の専門家は「同じ品番の部品(同じ部品)であっても、部品メーカーや生産地(生産国)によって製造プロセスや条件が微妙に異なっているケースはある。そのため、品質不具合の有無の判断に時間がかかり、追加リコールになることはあり得る」と言う。

日本と海外で材料が異なるケースも

 考えられる原因の1つに、材料の違いがある。日本ではJIS(日本産業規格)にのっとった材料を使うが、それと同じJIS番号の材料が海外にあるとは限らない。従って、それに相当する材料を採用するのだが、特性などが微妙に異なる場合がある。

 加えて、品質保証の専門家は、かつて次のような経験をしたという。「品質不具合を起こした部品を造った工場を調査している間に、別の時期に生産した部品や、他の工場で造った部品の品質にも不具合があることが分かった。結果、追加でリコールを届け出ることになった」(同専門家)。

 元自動車メーカーの設計者は「追加リコールは異例だが、ないわけではない」と言いつつ、その理由をこう説明する。同じ部品でも何らかの変更点があり、製造条件が変わって品質不具合の「ある部品」と「ない部品」が生じる場合がある。例えば、樹脂部品に対して成形条件は変えないが、金型をメンテナンスしたら品質不具合が発生するというケースだ。「最初のリコールの後にこうしたことが見つかれば、自動車メーカーは追加でリコールを届けざるを得ない」(同設計者)。