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 デジタルプロセス(神奈川県厚木市)は工業製品の組み立て工場における生産ラインの新設や改良について事前検証するVRシステム「DIPRO Xphere」(ディプロ クロスフィア、以下Xphere)の機能を強化、リアル(実際の生産ライン)と同じスピードで動く3Dモデルをすぐ近くからの視点で見られるようにする(図1)。新機能は2021年3月中旬をめどに、Xphereの機能改良パッチ「Xphere連携メニュー」として提供する。

 これまで生産シミュレーターを使う生産技術者は、全体の流れをふかんする視点で生産設備の動きや作業者への指示内容を決定していたが、工程ごとに設備や人の動きを細かく検証するのは難しかった。デジタルプロセスはXphereを生産シミュレーター「GP4」と連動させる新機能を開発し、GP4で仮想的に動かしているラインに生産技術者がVRで“入り込む”のを可能にした。

図1 Xphereで動く工場ラインを見る様子
図1 Xphereで動く工場ラインを見る様子
リアルと同じスピードで動くラインを作業者の目線で見られる。(出所:デジタルプロセス)
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 従来は3Dモデルを利用しても細部まで検証し切れなかったため、最後には実機で検証する必要があった。しかし、設備同士や設備と人が衝突する危険などが残っていたため設備や人を低速で動かさざるを得ず、検証に時間がかかるなどの課題があった。VRによって3Dモデルの詳細な動きを見られるようにして、問題を細部まで洗い出して設備や人の動きを修正し、実機検証の必要性を極力なくしていく(図2)。

図2 ラインと作業者のすぐ脇で動作状況を見る
図2 ラインと作業者のすぐ脇で動作状況を見る
作業者がラインと反対側を向き、棚から重量物をクレーンで取り出す、といった様子を間近で見られる。(出所:デジタルプロセス)
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 GP4でのシミュレーションでは、コンピューター内に3Dモデルで仮想の生産ラインを構築しておき、個々の設備や人ごとに細かな動き方と所要時間を定義し、ワークを流して動作させる。このGP4のシミュレーションとXphereを連動させるには、GP4からXphereに設備の形状情報(3Dモデル)と動作状況の情報の両方を渡す必要がある。

 このうち設備の形状情報はあらかじめファイルで渡しておく。動作状況の情報、具体的には時間の経過とともに変化する設備、ワーク、搬送車、作業者などの位置や向きであり、GP4のシミュレーションを動かしながらソフト間通信で常時送信する。Xphereの仮想空間では、GP4のシミュレーションと同じ動作状況を並行して再現できるため、生産技術者は稼働する生産ラインの中をXphereの機能で自由に動き回って見たり、作業者の動きを見守ったりできる。

 棚など固定した設備についても、作業者の視界を妨げて工場内を走行する搬送車が見えにくい、といった問題が分かりやすくなる(図3、4)。Xphere内で固定設備を邪魔にならない位置にずらし、様子を見られる

図3 背の高い障害物の陰から搬送車が現れる様子
図3 背の高い障害物の陰から搬送車が現れる様子
作業者の視点での検証が容易になる。(出所:デジタルプロセス)
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図4 図3と同じ場面をふかん視点で見るGP4の画面
図4 図3と同じ場面をふかん視点で見るGP4の画面
(出所:デジタルプロセス)
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* ただしワークやコンベヤーのような動く物体や設備は、シミュレーション中には位置の更新情報がGP4から随時もたらされるため、Xphereで移動してもすぐ所定位置に戻る。

 生産シミュレーターとVRシステムを連携させる際、これまでは3D形状情報はファイルで渡せるものの、設備の動きをVRシステム側で再定義する場合が多く、手間がかかっていた。生産シミュレーターのシミュレーション実行画面をVRシステムへ転送する方法もあるが、VR側では基本的に見るだけで、操作に制限があった。例えば、部品の属性情報を確認したり、部品をばらしてみたりといった検証をVR側の操作では実行できず、シミュレーター側に戻って操作する必要があった。

 Xphereは、デジタルプロセスが開発するさまざまなシミュレーションシステムとの連動も強化する方針。既に2020年秋には、自動制御設備の動作検証などに使う「VPS IOC」からソフト間通信で動作状況を転送する機能を開発。仮想または実際のセンサーからの信号と、それを入力とする制御プログラムで仮想的に3Dシステムを動かし、VRで検証するのを容易にした。