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 デジタル変革(DX)に向けたイノベーションを生み出す拠点として「出島」に取り組んでいる企業は多い。しかし新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年春以降、運営方法の見直しなどを迫られているケースが少なくない。在宅勤務が増えたことで、人と人がリアルに接する機会が減っているからだ。

 こうした中で、仮想現実(VR)技術を活用し「新常態時代」の出島に取り組んでいるのが、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)だ。オフィスや商業施設の内装デザインなどを手掛ける丹青社と共同で、新サービスの開発を進めている。2021年4月以降のビジネス化を見据え、同年3月末までにサービスの機能や使い勝手などを検証する計画だ。

 新サービス「Innovation Space DEJIMA Digital(デジマデジタル)」では、東京都品川区にあるCTCのイノベーション拠点「Innovation Space DEJIMA(デジマ)」を仮想空間上に再現する。丹青社がデジマを設計したときに作成した内観の3次元CG(コンピューターグラフィックス)データを基に、ブラウザーベースのVRコミュニケーションツールを開発。デジマの会員向けに提供する予定だ。CTCが持つVR技術などのノウハウと、丹青社の空間デザインやコミュニケーション活性化などのノウハウを組み合わせる。

東京都品川区のイノベーション拠点をVR化した。
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東京都品川区のイノベーション拠点をVR化した。
(出所:伊藤忠テクノソリューションズ)

 デジマは、CTCが顧客企業とのビジネス共創を目的として2017年に設立した会員制の拠点だ。これまで、同社と関東地方で物流事業などを手がけるTAKADAとの合弁会社「TriValue(トライバリュー)」(2020年6月に設立)を生み出すなどの成果を上げている。2021年1月下旬の時点で、大企業の新規事業担当者や五反田周辺のITベンチャーなど700~800人が会員登録しているという。

VRで「コミュニケーションの隙間」を補う

 共創の場として、イベントやワークショップの開催、コワーキングスペースの提供などをしているデジマだが、新型コロナ禍で活動の縮小を余儀なくされている。事前予約なしでの施設利用を停止したほか、イベントやワークショップもすべてオンラインに移行した。さらに2020年4~5月と2021年1月に発令した緊急事態宣言下では、事前予約の施設利用も停止している。

 CTCでデジマを担当するサービスデザイングループ SD企画統括部 共創企画推進課長の五十嵐知宏氏は「アイデアが『着火』するタイミングが圧倒的に少なくなっている。『出会い』や『発見』といったアイデアを作る機会が減ったからだ。会員からも『新しいことを仕込む機会に飢えている』といった声が多く寄せられている」と語る。その背景には、既存のオンライン会議やチャットのツールでは「コミュニケーションの隙間」が補えていないことがあるという。

 既存のコミュニケーションツールは、特定の目的や話題があるときに利用するのは便利だが、現実世界で会ったときのように何げなく声をかけたり、雑談をしたりする機会は少ない。「こうしたコミュニケーションの隙間にアイデアが潜んでいる」(五十嵐氏)。

 そこで始めたのが、今回の取り組みだ。2020年8月頃から本格的な検討に入り、同年12月にベータ版をリリースした。