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 フランス・ルノー(Renault)は2021年1月、ルノーグループ(Groupe Renault)の復活(Resurrection)、刷新(Renovation)、変革(Revolution)に向けた新しい戦略「Renaulution(ルノーリューション)」を発表した。同グループCEO(最高経営責任者)のLuca de Meo(ルカ・デメオ)氏によれば、同グループの19年の使用資本利益率(ROCE)は15年から半減、損益分岐点もあるべき点から15%高くなっており、戦略の転換が必要だった(図1)。

図1 オンラインの記者会見に登場したルノーグループCEOのルカ・デメオ氏
図1 オンラインの記者会見に登場したルノーグループCEOのルカ・デメオ氏
画像はオンライン記者会見の画面をキャプチャーしたもの。
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 同氏によれば、同グループでは量の追求が優先で、市場やブランドのポートフォリオ管理に関するアプローチも定まっていなかった。「目標は22年までに(年間)500万台を販売することであり、その目標の達成に向けて躍起になっていた」(同氏)。生産能力を拡大し、R&D(研究開発)とCAPEX(資本的支出)に充てる投資を4年間で65%増やしたが、19年の販売台数は360万台と伸び悩んだ(図2)。ROCEの半減と損益分岐点の15%の上昇は、その結果といえた。

図2 伸び悩むルノーグループの状況
図2 伸び悩むルノーグループの状況
生産能力を拡大し投資(R&D+CAPEX)を増やしたが、19年の販売台数は360万台と伸び悩んだ。画像はオンライン記者会見の画面をキャプチャーしたもの。
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 「(規模は)大きくなったが、(業績は)良くならなかった」と同氏は振り返る。同グループは、今では130カ国以上で販売を手掛けるグローバル企業だ。だが、同グループの利益は、販売量が欧州とその他で同等にもかかわらず、「欧州30カ国で3/4を依然として稼ぎ出している」(同氏)という具合にグローバル化のメリットを享受していない。

 この背景にあるのが、グローバル化による製品の多様性/複雑性の増大だ。地域専用モデルが19年時点では販売台数の40%を占め、量産効果を引き出しにくい状況に陥っており、かつ1つの組み立て工場で扱う部品の種類もベンチマークよりも20%も多くなっていた(図3)。さらに、量を追求するあまり、「新興国市場ではどうしても収益性の低いセグメントに手を伸ばしてしまった」(同氏)こともあって、欧州以外であまり稼げない構図となっていた。

図3 製品の多様性/複雑性の増大によるマイナス面
図3 製品の多様性/複雑性の増大によるマイナス面
19年時点では地域専用モデルが販売台数の40%を占めていた。また、1つの組み立て工場で扱う部品の種類もベンチマークよりも20%も多くなっていた。画像はオンライン記者会見の画面をキャプチャーしたもの。
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 加えて、ブランドのポートフォリオ管理の点から見ても、主要ブランド間に重複があった。同グループには、中核となるルノーと、低価格車を扱う「Dacia(ダチア)」「Lada(ラーダ)」という主要ブランドがある。シェア拡大のために、欧州以外の市場では、ルノーブランドでもダチア/ラーダと同じ価格帯の製品を売っていた。

 新戦略であるルノーリューションを掲げた同グループは、こうした反省を踏まえ、「量」の追求から「価値」の追求にかじを切る。デメオ氏は、「我々は、何をしなければいけないかは分かっている。まずは、収益分岐点を下げる。それから、不必要な多様性/複雑性をなくす。さらには、採算性の高いものに投資する。そして、市場シェアではなく利益を追求する。これが、まずゲームの序章である」と強調する。