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 国民健康保険を担う自治体が、データ分析を活用して住民の疾患予防や健康作りに積極的に取り組んでいる。取り組みが加速したきっかけは、2016年度から一部で始まり2018年度に本格的に開始した「保険者努力支援制度」だ。国が自治体の予防などに関する取り組みを評価し、結果に応じた交付金を交付する。

大阪市は対象住民に骨粗しょう症の治療を促し、再骨折や寝たきりを予防する。
大阪市は対象住民に骨粗しょう症の治療を促し、再骨折や寝たきりを予防する。
(出所:PIXTA)
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 国が自治体に対してデータ分析や予防サービスなどを手掛ける民間企業との連携を推奨していることもあり、自治体の施策を支援する企業の需要が増している。キャンサースキャン(東京・品川)もそうした企業の1つで、自治体が保有するレセプト(診療の明細情報)や健診データを解析し特定健診やがん検診などの受診率を高める支援を手掛ける。

 これまでキャンサースキャンは自治体から報酬を得て地域住民の特定健診などの受診率を高める施策に取り組んできた。しかし自治体の予算を確保するまで時間がかかる場合があり、支援の機会が限られていた。そこで同社は企業に資金を提供してもらい、自治体の支援を実施する取り組みを新しく始める。

 第1弾となる見込みなのは、製薬企業のアムジェンから資金提供を受けて大阪市で実施するプロジェクトだ。骨粗しょう症の高齢者に治療を促すことで、再骨折や寝たきりを予防する。

 アムジェンは骨形成を促進する骨粗しょう症治療薬を販売している。ただし受診につながっても、必ずしもアムジェンの医薬品が患者に処方されるわけではない。自治体との連携で患者の治療機会を増やすことで、社会課題の解決に貢献する好機ととらえているようだ。

 骨粗しょう症の患者は1度の骨折がきっかけで、次の骨折を起こしやすい。初めての骨折から5年以内では約54%が再び骨折するともいわれている。特に体を支える大腿骨を折ってしまうと、歩行が難しくなり寝たきりで介護が必要になるケースが多い。一方で「初めての骨折で骨粗しょう症と分かっても全体の2割ほどの患者しか治療していない。このことが医療費や介護費の増大につながっている」(キャンサースキャン社長の福吉潤氏)。

 「大腿骨骨折の治療には約150万円の治療費がかかり、介護が必要となったら年間約240万円の介護費がかかってしまう。大腿骨骨折を防ぐことで介護を予防できれば、大阪市の規模で年間数十億円以上の医療費や介護費を抑制できる可能性がある」と福吉氏は推定する。