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 市場支配力が強い巨大ITプラットフォーム企業に取引の情報開示と自己点検を義務付ける規制が2021年春から始動する。巨大IT企業に自主改善を促す仕組み作りで、まずは取引の公正さを高めていく狙いだ。企業の自主性を尊重した日本型の規制が有効に機能するかが試される。

 2021年2月1日に施行した「デジタルプラットフォーム取引透明化法」(特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律)で、IT企業への規制を導入した。ネット通信販売(EC)とスマートフォン向けアプリ配信の2つの市場が対象で、ECでは楽天とヤフーの国内2社に加えて米アマゾン・ドット・コムが、アプリ市場では米アップル、米グーグルの2社がそれぞれ対象企業に指定される見通しだ。

 指定を受けた企業は取引条件を事前に開示し、取引や苦情処理などの状況を自己点検して年次で国に報告する義務を負う。近年は取引条件変更を一方的に要求するなど、優越的地位の乱用が疑われる独占禁止法上の調査が巨大IT企業で相次いでいる。自己点検を義務付けることで、独禁法を運用する前にこれらの疑わしい取引を減らす狙いだ。

ECは問題が起きやすい総合物販に限定

 規制の対象企業は、ECでは国内流通総額が3000億円以上の総合物販、アプリ市場は流通総額が2000億円以上と新法の関連政令で規定した。国による指定はこれからだが、ECは米アマゾンと楽天、ヤフーの3社までが対象になる公算が大きい。アプリ配信は市場を2社で分ける米アップルと米グーグルの2社となることがほぼ確実だ。

EC市場で国内流通総額3000億円以上の主な企業
事業名(企業名)流通総額(決算期)指定の可能性(本誌推定)
楽天市場(楽天)3兆円超*(2020年12月期)
アマゾン(アマゾン・ドット・コム)3兆~4兆円(推定、2020年12月期)
Yahoo!ショッピング(PayPayモールなどを含む、ヤフー)8901億円(2020年3月期)
ヤフオク!(ヤフー)8041億円(2020年3月期)×(個人間取引)
メルカリ(メルカリ)6259億円(2020年6月期)×(個人間取引)
ZOZOTOWN(ZOZO)3451億円(2020年3月期)×(専門性高い、ただしヤフーとの連携状況によっては○)
*トラベルやファッションなど含む場合は4兆4510億円

 国内EC市場は10兆円を超えており流通額3000億円は必ずしも大きくない。法律を担当する経済産業省は、過剰な規制にならないよう業態を「飲食料品や日用品などを扱う総合物販」に限定し、個人間取引や専門性が高いECは除外した。企業間取引で問題が起こりやすい市場に限定するためだ。

 総合すると、ECの規制対象は総合物販サイトを運営する米アマゾンと楽天、ヤフーの3社となる見通しだ。流通総額3000億円を超えていても個人間取引のメルカリや、ヤフーが運営する事業のうち「ヤフオク」は対象外となる。

 ヤフーの兄弟会社でZホールディングス傘下のZOZOも3000億円を超えるが、ファッション専門であることに加えてYahoo!ショッピングとは別のサービスとして提供されている。そのため指定の対象外となる公算が大きい。楽天では総合物販の「楽天市場」は対象だが、「楽天トラベル」など専門サービスは対象外となる可能性がある。

 ただし対象逃れを防ぐため、経済産業省はサービス提供の実態を総合的に判断する方針だ。総合ECと連携する専門ECサービスは、業者に対する取引条件の同一性や利用者が同じIDでサービスを利用できるかなど、様々な観点で一体性の高さを審査するという。

デジタルプラットフォーム取引透明化法の運用の概要
デジタルプラットフォーム取引透明化法の運用の概要
(出所:経済産業省)
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