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 営業秘密の漏洩対策がにわかに注目を集めている。警視庁は2021年1月12日、ソフトバンクから転職した楽天モバイル社員を営業秘密持ち出し容疑で逮捕した。同日、ソフトバンクは楽天モバイルに営業秘密の利用停止を求めて民事で提訴する予定だと発表した。ソフトバンクによれば、持ち出されたのは4G・5Gネットワーク用の基地局に関する技術情報だという。

ソフトバンクの発表文書
ソフトバンクの発表文書
(撮影:日経クロステック)
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 これを機に日本企業の間で、営業秘密漏洩対策を強化する動きが出ている。

 営業秘密は、いったん持ち出されてしまうと被害回復が極めて困難な性質がある。持ち出された営業秘密が利用されていることを立証するのは容易ではないうえ、裁判での決着には数年単位の長い期間を要する可能性が高いからだ。ソフトバンクが4Gや5G事業に関する被害回復のため楽天モバイルを提訴しても、決着する頃には既に4G・5Gの時代は過ぎ、「6G」が競争の中心になっているかもしれない。

メールやチャットに表れる兆候をAI検知

 そこでセキュリティー製品各社は営業秘密が漏洩する前の危険な兆候を検知する製品に注力している。新型コロナウイルス禍で在宅勤務が増え、機密情報の漏洩対策への関心が高まっていたからだ。「ソフトバンク事件」を契機に、営業秘密への漏洩対策として、さらに関心が高まるとみる。

 FRONTEOはAI(人工知能)でメールやチャットによるコミュニケーションを監査するツール「KIBIT Communication Meter」を提供済みだ。同社は独自の自然文解析技術を訴求する。顧客企業は見つけ出したいメールやチャットの例文を「教師データ」として用意する。野崎周作執行役員リーガルテックAI事業本部部長は「20~30件程度の比較的少量の教師データでも機能するのが特徴だ」と説明する。

FRONTEOの「KIBIT Communication Meter」で検知できる不正兆候の例。微妙なニュアンスをAIで解析
FRONTEOの「KIBIT Communication Meter」で検知できる不正兆候の例。微妙なニュアンスをAIで解析
(出所:FRONTEO)
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 営業秘密の漏洩に際して、「あの基地局の情報、どこにあったっけ?」といった、社内情報の在りかを同僚に尋ねるようなやり取りが兆候として発生する場合が多いという。こうした文例を教師データとして与えておけば、実際にメールやチャットでやり取りが発生した時に検知してアラートを出す。アラートが多い社員の振る舞いに注意するなどすれば、営業秘密漏洩を未然に防げる可能性がある。