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 「一体、何の報告書か。『真因(問題を引き起こす本当の原因)』に対する追究が甘く、これで再発防止につながるとは思えない」――。2021年2月16日に曙ブレーキ工業(以下、曙ブレーキ)が公表した品質データ偽装に関する報告書を、ものづくりに詳しいコンサルタント(以下、識者)はこう断じる。「現場の担当者に責任を押し付ける記述も違和感を覚える。組織的な不正であることを隠しているのではないかと疑わざるを得ない」(識者)。

 曙ブレーキが、自動車用ブレーキで品質データ偽装問題を起こしていたことが判明した。ディスクブレーキとドラムブレーキの両製品で、顧客である自動車メーカーと取り決めた検査を実施せず、品質データを偽装。社内に残っているデータ(残存データ)を遡ると、少なくとも2001年1月から品質データ偽装に手を染め、以降2019年11月までの18年10カ月にわたって曙ブレーキは不正を続けていたことが分かった。納入先は、トヨタ自動車や日産自動車を含む10社の自動車メーカーだ。

品質データ偽装が発覚した自動車用ブレーキ
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品質データ偽装が発覚した自動車用ブレーキ
上がディスクブレーキで、下がドラムブレーキ。(出所:曙ブレーキ)

 品質データ偽装を行っていたのは、曙ブレーキ山形製造(山形県寒河江市)と曙ブレーキ岩槻製造(さいたま市)、曙ブレーキ福島製造(福島県伊達郡桑折町)、曙ブレーキ山陽製造(岡山県総社市)の国内4工場。顧客と取り決めた50の検査項目のうち、各種の強度や耐久性、気密性、締め付けトルクなど36項目の品質データを偽装していた。残存データの総数(19万2213件)のうち、偽装された品質データ(11万4271件)は59.5%にも及ぶ。

* 曙ブレーキは国内に6工場を持つ。調査の結果、残りの2工場については品質データ偽装が見つからなかったという。

 具体的には、[1]データのねつ造、[2]データの改ざん、[3]検査の省略――の3つの偽装を曙ブレーキは行っていた。品質データは「ばらつき」があるため、顧客との間で管理値(データの許容限度。以下、顧客指定管理値)を取り決める。[1]のデータのねつ造では、実際には検査を行っていないにもかかわらず、顧客指定管理値に収まっていた過去の品質データを顧客に提出する報告書に記載した。

偽装された品質データの割合
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偽装された品質データの割合
残存データの総数のうち約6割を占める。(出所:日経クロステック)