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 半導体製造装置を手掛けるディスコの業績が好調だ。半導体市場の活況を受け、2021年3月期通期は前期比30%増と大幅な増益を見込む。直近では、約175億円を投資して工場を増設するなど生産能力増強に踏み切った。好調の半導体業界の中でも頭一つ抜けて高い成長率を誇る理由は何か。同社代表取締役社長の関家一馬氏に聞いた。

「対戦形式」 本気度高い改善活動

 ディスコに限らず半導体関連企業は軒並み好業績だが、その中でも同社は高い成長率を誇る。直近の21年3月期第3四半期累計期間(20年4~12月期)の連結決算は、売上高が前年同期比24.7%増の1276億900万円、営業利益が同42.9%増の366億7300万円だった。通期でも、売上高は前期比21.4%の1713億円、営業利益は同30.0%増の474億円と、いずれも2桁成長を見込む。

 他社以上の成長率を達成した秘訣に、関家氏は「Performance Innovation Management(PIM)」と呼ぶディスコ独自の改善活動によるコスト削減を挙げる。このPIMによって、半導体市場の活況を「自社の売り上げや利益に結び付けられた」(同氏)。

ディスコ代表取締役社長の関家一馬氏
ディスコ代表取締役社長の関家一馬氏
最高経営責任者(CEO)、最高執行責任者(COO)、最高情報責任者(CIO)、技術開発本部長を兼務する(出所:ディスコ)

 改善活動自体は製造業全般で見られる取り組みだ。ディスコのPIMのユニークな点として、「改善事例を対戦形式で発表」「観戦した社員が自身の保有する社内通貨(Will)を投票して勝者を決定」などが挙げられる。発表者は勝敗や投票結果に応じて社内通貨を受け取り、勝者に投票した観戦者にも配当が出る。勝敗には、社長である関家氏の採点も反映される。同氏はほぼ全ての対戦を観戦しているという。

 ディスコの社員にとって社内通貨は社内リソースの利用に不可欠だ。そのため発表や投票への本気度は高い。このような仕組みによって改善活動の形骸化を防ぎ、継続的なコスト削減を実現しているのだ。

PIMの改善事例発表
PIMの改善事例発表
広島事業所と長野事業所が対戦している様子(出所:ディスコ)
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 しかも、PIMの対象は工場にとどまらず、本社や営業所など全ての職場に及ぶ。日ごろから利益への意識を高めていたことで、半導体市場の空前の活況を大幅な増益につなげた。

 現在の活況は、新型コロナウイルス禍の「巣ごもり需要」で、データセンターやパソコン向け半導体が伸びたという側面がある。今後、巣ごもり需要は一段落するが、それでも半導体市場は短・中期的にも長期的にも右肩上がりの成長が期待できるという。

 短・中期的に需要増が期待できる分野として関家氏が挙げたのは、IoT(Internet of Things)や自動車、医療などだ。さらに、世界各国が治安維持などの目的で監視カメラの導入を急速に進めており、それによる需要も見込んでいる。一方、長期的な需要のドライバーに関しては、米Apple(アップル)のスマートフォン「iPhone」を引き合いに予想は難しいと語る。「iPhoneが出る前にアップルが携帯電話業界を塗り替えると予想していた人はいなかった」(同氏)。

巨大な新棟は打ち放しの状態、内製で拡張

 ディスコは、半導体市場の拡大を見越して生産能力増強も進める。21年1月には、長野事業所・茅野工場(長野県茅野市)に免震構造・地上10階建ての新棟(B棟)が竣工した。延べ床面積は約13万1858m2で、既存棟(A棟)の約6.5倍。投資額は約175億円である。

長野事業所・茅野工場
長野事業所・茅野工場
右が21年1月に竣工した新棟(B棟)。延べ床面積は左の既存棟(A棟)の約6.5倍である(出所:ディスコ)
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 B棟をフル活用した場合、ディスコ全体の生産能力は売上高換算で約3000億円になる。前述の通り21年3月期通期の売上高見通しが1713億円なので、現在の2倍ぐらいまでは成長できるという自信があるわけだ。