機能やスペックを追い求めているだけでは、選んでもらえない――。ホンダは、小型SUV(多目的スポーツ車)「VEZEL(ヴェゼル)」を全面改良して2021年4月に発売する(図1)。ヴェゼルは13年12月にホンダが市場投入した当時としては数少ない小型SUV。世界約120カ国で累計約384万台(20年11月時点)を販売した同社の主力グローバルモデルの1つだ。7年振りの全面改良となる今回は、時代のニーズを踏まえた「世界で選ばれるクルマ」へと進化させる。
ホンダが同車のグランドコンセプトとして掲げるのが、「AMP UP YOUR LIFE」である。かみ砕くと、「実用性だけでなくプラスアルファの体験価値を提供することで、日々の生活の楽しさを増幅(AMP UP)させるようなモデル」(同社)という意味だという。実用的でありながらも、乗って楽しく、眺めて美しく、ワクワクして毎日の生活が豊かになるクルマ――。そんなイメージだ。
その実現のために重視した要素の1つが、SUVらしい力強いプロポーションとゆとりの空間の両立である(図2)。人間のための空間は最大にし、機械のための空間は最小にするという同社独自の「マン・マキシム/メカ・ミニマム思想(M・M思想)」に基づく「センタータンクレイアウト」を踏襲したプラットフォームを更新して、その両立につなげた。
ゆとりの空間においては、気持ちの良い抜けのある爽快さも強く意識した。水平基調のインスツルメントパネルと、フロントピラーの角度調整によって、自車の状態を把握しやすい視界を確保。「PLaY」グレードに装備する大型のパノラマルーフは、運転者だけでなく乗員にも爽快感や開放感を提供する(図3)。エアコンにもそよ風のような風を送れる新設計の吹き出し口を採用した(図4)。