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 日産自動車が、シリーズハイブリッド機構「e-POWER」の欧州展開を開始する。同社は2021年2月18日、パワートレーンにe-POWERを採用したSUV(多目的スポーツ車)の新型「Qashqai(キャシュカイ)」を発表した。

 新開発した可変圧縮⽐(VCR:Variable Compression Ratio)エンジンを発電機として使うのが大きな特徴だ。Qashqaiのe-POWER搭載車は、22年に市場投入する予定である(図1)。

図1 日産自動車の新型SUV「Qashqai(キャシュカイ)」
図1 日産自動車の新型SUV「Qashqai(キャシュカイ)」
2021年夏に12V簡易ハイブリッド車(HEV)を発売し、22年にe-POWER搭載車を追加する予定である。(出所:日産自動車)
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 「第2世代のe-POWERはシステムのバリエーションを増やしていく。グローバル展開していけるように、(エンジンやモーターなど主要部品の)ユニットを開発してきた」。日産でe-POWERのシステム開発を担当する羽二生倫之氏(パワートレイン・EV技術開発本部パワートレイン・EVプロジェクトマネージメント部e-POWERプロジェクトマネージメントグループパワートレイン主管)はこう語る。

 日産は20年12月に日本で発売した新型「ノート」から第2世代のe-POWERの採用を始めている。今回発表したQashqaiも第2世代品となるが、羽二生氏の言葉通り、搭載する発電用エンジンはノートと異なる(図2)。

図2 Qashqaiに搭載するハイブリッドシステム
図2 Qashqaiに搭載するハイブリッドシステム
e-POWERはシリーズハイブリッド機構で、エンジンを発電のみに使ってモーター駆動する。発電した電力は、前席下に配置したリチウムイオン電池に蓄える。(出所:日産自動車)
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 欧州市場で発売するQashqaiは、排気量1.5LのVCRエンジンを採用した。排気量1.2Lのガソリンエンジンを使うノートよりも大型のエンジンを搭載し、燃費の改善や発電量の確保を図る。e-POWERは弱点として、欧州などで高速走行時にエンジンが高回転で作動し、効率が悪くなるという点が指摘されていた。

 VCRエンジンを適用するのも燃費のためだ。同エンジンの肝は、気筒の容積を変動させるためにピストンの位置を制御するリンク機構である(図3)。気筒の内径(ボア)に比べて行程(ストローク)を長くする「ロングストローク」を実現するために採用したとみられる。ロングストロークにすることでエンジンのシリンダー内部の表面積を小さくでき、燃焼した火炎の冷却損失を抑えられる。

図3 VCRのリンク機構
図3 VCRのリンク機構
ピストンとクランクシャフトをつなぐコンロッドの代わりに取り付けて、ピストンとクランクシャフトの距離を可変にする。(出所:日産自動車)
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 VCRエンジンで発電した電力を蓄えるリチウムイオン電池の容量は明らかにしていないが、ノートが搭載する電池の容量である約1.5kWhより大きくなりそうだ。ヒントは、日産が19年11月に発表した高級車ブランド「インフィニティ(Infiniti)」の電動パワートレーンにある。実はこの時、排気量1.5LのVCRエンジンを開発中であることを明かしていた。

 エンジンを搭載するInfinitiのシリーズHEVは、「車種に応じて3.5kWhから5.1kWhの容量の電池を組み合わせる」(日産)としていた。電池容量を大きくすることでエンジンを始動させて発電する頻度を減らすと同時に、加速性能を高める狙いがある。