2021年以降、第5世代移動通信サービス(5G)において、いわゆるミリ波帯(日本では28GHz)を使ったサービスが世界各国で本格化する*1。
しかし、ミリ波は電波が遠くまで届きにくいという課題がある。直進性が高く、遮へい物で減衰しやすいためだ。例えば、屋外の基地局と屋内の端末がミリ波で通信すると、通信環境が不安定になる。
そこでAGCは、「メタサーフェスレンズ」を開発した。メタサーフェスレンズは、その名の通り、ミリ波を一点に集めるレンズとして機能する。メタサーフェスレンズの機能を持つシートを窓ガラスの内側に貼って使用する。
この集めたミリ波を、電波を狙った位置に拡散させる性質を持つアクティブリフレクターを介して部屋中に拡散することで、窓ガラスでの減衰の影響を抑える。将来的には、増幅機能を持つリピーターを併用する。本技術はNTTドコモと共同開発し、2021年1月に発表した。ミリ波の国内商用網の本格化が見込まれる2023年までに、商用化可能な段階まで研究開発を仕上げるのが目標である。
メタサーフェスで電波を一点に
メタサーフェスは、「ユニットセル」という立体構造を周期的に配置して、入射した電波の位相をコントロールする技術である。
メタサーフェスレンズは、厚さ数μmとフィルムのように薄く、表面には、低抵抗の導体で作られた数mmサイズのユニットセルが数mm置きに同心円状に配置されている。このメタサーフェスが特定の周波数の電波の位相を変化させ、通過した電波を焦点に集める。窓ガラスに入射する電波の総量はレンズの有無によらず不変だが、それを1箇所に集められるのが、この技術の特徴である。ユニットセルの寸法や配置によって、対応する周波数や焦点を一定の範囲内で調整できるという。