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 日産自動車は高品質なドアの閉じ音を開発し、小型車の新型「ノートe-POWER」に適用した。欧州の高級車のようなドアの閉じ音によって、同車の商品価値を高めるのが狙いである。様々な情報を運転者などに提供する「情報提示音」の高品質化も、新型ノートe-POWERで実現した。いずれも今後、他の日産車にも適用する計画だ。高品質な音を実現した同社の取り組みを追う。

 クルマのドアは、ユーザーが利用するときに最初に触れる部品である。毎日クルマを使うユーザーは、何度もドアを開け閉めする。ただ、小型車や軽自動車のドアは閉めたときに、耳障りな金属音がする場合が多い。ユーザーにとって、こうした音はストレスの1つになる。

 ドアの閉じ音は、実際に閉めてみると分かる。ユーザーへの商品力の重要な訴求点として日産自動車は、新型ノートe-POWER(以下、新型車)の開発において、高品質なドアの閉じ音の実現に挑んだ(図1)。

ノートe-POWER
図1 新型「ノートe-POWER」
高品質なドアの閉じ音と情報提示音を実現した。(出所:日産自動車)
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高品質に感じる閉じ音を解析

 小型車のドアは高級車のドアより面積が小さいため、ドアを閉じたときの音が高くなりやすい。ドア外板の板厚を厚くすれば高級車のような重厚な閉じ音を実現できそうに思えるが、実際にはそう単純な話ではない。ドアの外板を厚くすれば、コストが増える。ドア自体の質量が重くなり、閉めにくくなったり、燃費性能を悪化させたりする要因にもなる。

 日産は外板の板厚を増やさずに、高品質な閉じ音の実現を目指した注1)。また、コストの増加を抑えるため、ドアに大幅な変更を加えないようにした。

注1)日産は、顧客がクルマに乗り込み、運転して降りるまでに体感する「上質感・高級感を感じる造りの良さ」や「顧客の期待を超える考えられた演出」を「高品質感」と定義した。高品質感を実現するための取り組みテーマを決め、顧客に提供する価値を定義。その価値を実現するための目標値(代用特性)を定め、その特性を部品などの設計に落とし込む。ドアの閉じ音と情報提示音の改善は、こうした同社の取り組みの一環である。

 日産が言う「高品質な音」とは、具体的にはどのようなものか。同社第二製品開発本部 第二製品開発部でHMI内装計画・設計グループ主担の角田浩康氏によると、「重厚で」「収まりが良く注2)」「ガチャつかず」「適度な大きさ」の音である。

注2)ドアを閉めたときに発生する音が短時間で収束することを、音の収まりが良いという。

 具体的な物理特性に落とし込むと、「低周波成分の比率が高く、高周波成分の比率が低く(重厚な)」「収束時間が短く(収まりが良く)」「ラウドネスレベル(音の大きさ)が適当な」音は高品質に感じるという(表1)。

ユーザーが高品質と感じる音
表1 ユーザーが高品質と感じる音
低周波成分の比率が高く、高周波成分の比率が低く、収束時間が短く、ラウドネスレベルが適当である音は高品質に感じるという。日産自動車の資料を基に日経Automotiveが作成。
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 高品質な閉じ音の実現に向けて同社はまず、ドアを閉めたときに車体のどの部分からどのような音が出ているかを調べた。集音マイクを使ってドアの閉じ音を解析すると、ドアの外板から低周波数(125Hz)の音、ドアのかみ合い部(ラッチとストライカーの2部品で構成)から高周波数(2000Hz)の音が出ていることが分かった。

 高品質な閉じ音を実現するには、ドアの外板で発生する低周波成分の比率を高め、ドアのかみ合い部で発生する高周波成分の比率を低くすることなどが必要になる(図2)。

ドアの閉じ音の発生場所と発生する音の周波数
図2 ドアの閉じ音の発生場所と発生する音の周波数
ドアのアウターパネルから低周波数の音が、ラッチのかみ合い部から高周波数の音が出ていることが分かった。日産自動車の資料を基に日経Automotiveが作成。
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