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 スズキ会長の鈴木修氏が退任する。1978年に同社の代表取締役社長に就任して以来、42年あまり経営トップを務めた「カリスマ経営者」が相談役に退く。「多少ワンマンなところも感じたが、鈴木修さんだからこそ、スズキはあれほどまで大きく成長した」(元トヨタ自動車の技術者)と競合企業のOBも功績をたたえる。

スズキ会長の鈴木氏(右)
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スズキ会長の鈴木氏(右)
トヨタ自動車社長の豊田章男氏(左)と握手を交わすスズキ会長の鈴木修氏。写真は2016年の業務提携時のもの。(写真:トヨタ自動車)

 鈴木氏が社長に就任した際のスズキの売上高は3232億円。これを同氏は2019年度に3兆4884億円と10倍超に伸ばした。中でもインド市場への進出は、スズキを世界的な自動車メーカーに成長させた大きな要因となった。

 鈴木氏は1982年にインド政府と4輪車の合弁生産で基本合意した後、同政府とスズキの合弁会社であるマルチ・ウドヨグ(現マルチ・スズキ)を設立。翌年の1983年からインドでの自動車生産に踏み切った。以来、「スズキ」という言葉がインドにおいて小型車の代名詞となるほどスズキ車は高い人気を得るようになり、2019年度には141万台を販売して51%のシェアを獲得。シェア17%で2位の韓国Hyundai Motor(現代自動車)に90万台を超える圧倒的な差を付けて独走している。

インドの道路
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インドの道路
インド市場でのスズキのシェアは高く、道路にはたくさんのスズキ車が走っている。(写真:日経クロステック)

* 日本貿易振興機構(ジェトロ)「2019年度の自動車販売・生産が2桁台の落ち込み(インド)」より。URLはhttps://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/436a8a963adef163.html

インド市場における自動車(乗用車)メーカーのシェア
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インド市場における自動車(乗用車)メーカーのシェア
2019年度のデータ。スズキ車(マルチ・スズキ)のシェアが2位以下を引き離してトップに立っている。

 今でこそ自動車の一大市場となっているインドだが、スズキが進出した当時は、積極的に同国に進出しようとする自動車メーカーはなかったという。当時のインドは経済成長前で、自動車メーカーにとって市場としての魅力はまだ乏しかった。そうした中、他社に先駆けてインド進出を決めた鈴木氏の判断は、さまざまな人から「先見の明がある」と褒められたという。

 だが、鈴木氏自身はそうした見方を否定している。ある大学が2007年に主催したシンポジウムに登壇した同氏は、インド進出の「真相」を次のように語ったのだった。