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 ソニーが車載LiDAR(Light Detection and Ranging)部品で攻勢をかける。2021年2月、長い測距性能と低コスト化の両立を狙った車載LiDAR向け受光素子の成果を発表した。大きなシェアを握るイメージセンサーの技術や、米Apple(アップル)製品で採用されたとされる受光素子技術を車載用途に応用するなどして実現するようだ。22年のサンプル出荷を目指す。自動運転の「三種の神器」のうち、ミリ波レーダーを除く2種類を手中に収めて、自動車分野で存在感を高める。

 ソニーは20年12月、LiDARの受光部に用いる高い感度を実現したSPAD(Single Photon Avalanche Diode:単一光子アバランシェダイオード)センサー技術について、半導体デバイスやプロセス技術に関する国際会議「66th International Electron Devices Meeting(IEDM 2020)」で発表した。今回、その成果を基に市販のレーザー光源とMEMSミラーを組み込んだLiDARモジュールを試作し、半導体のオリンピックと称される国際学会「2021 International Solid-State Circuits Virtual Conference(ISSCC 2021)」で評価結果などを公表した。

 ソニーはSPADセンサーの市販化にとどめ、モジュールまで手掛けない予定。それでもモジュール単位の性能を披露することで、センサーの顧客となる主に1次部品メーカー(ティア1)に強く訴求しやすくなる。

ソニー(ソニーセミコンダクタソリューションズとベルギーSony Depthsensing Solutions、ソニーLSIデザイン)が試作したSPADセンサー
ソニー(ソニーセミコンダクタソリューションズとベルギーSony Depthsensing Solutions、ソニーLSIデザイン)が試作したSPADセンサー
(出所:ISSCCとソニー)
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SPADセンサーで撮影した画像(Passive Images)の例
SPADセンサーで撮影した画像(Passive Images)の例
(出所:ISSCCとソニー)
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 SPADは一般的なイメージセンサーに比べて感度が高い画素構造を備えた受光素子である。LiDARで用いる際には、SPADを2次元アレー状に並べて、これに読み出し回路などの回路部を加えてSPADセンサーとして利用する注1)

†SPAD=入射した1つの光子(フォトン)から、雪崩のように電子を増幅させる「アバランシェ増倍」を利用する半導体素子。
注1)自動車用の長距離LiDARでは、測距にToF(Time of Flight)方式を利用するのが一般的。赤外域の波長のレーザー光を照射し、対象物で反射して戻ってくるまでの時間を算出して距離を測るToF方式のうち、自動車向け長距離LiDARで多用されるのが直接ToF(ダイレクトToF、dToF)である。受光素子に高感度なSPADセンサーを用いる。

 ソニーは今回、SPADアレーの下に読み出し回路などを積層した裏面照射型のSPADセンサーを開発した。加えて同センサーと市販の発振波長905nmのレーザー光源、MEMSミラーを組み込んだLiDARモジュールを試作。同モジュールによる測距結果やSPADセンサーの読み出し回路の技術などについて発表した。

試作したSPADセンサーの概要
試作したSPADセンサーの概要
(出所:ISSCCとソニー)
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評価用LiDARモジュールの概要
評価用LiDARモジュールの概要
(出所:ISSCCとソニー)
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