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 卸電力市場の高騰問題に関連して、資源エネルギー庁は市場価格やインバランス料金単価を遡って見直すことに慎重な姿勢を示した。かねて、新電力などは高額なインバランス料金徴収で生じる利得の合理的な還元を求めていた。新電力の経営危機が迫っている。

 「(2020年)12月分のインバランス精算が3月5日から始まる。高騰でダメージを受けた小売電気事業者に対する追加支援策がなければ、新電力の撤退などが少なからず現実のものとなる可能性がある」(新電力幹部)

 市場高騰で需要分の電力を調達できなかった小売電気事業者は、不足分に対してインバランス料金の支払いが求められる。市場高騰が始まった12月半ば以降、インバランス料金が高額な時間帯が増えた。新電力などによる高騰時のインバランス量は相当量に上ると推測され、その負担が3月にものしかかる。

 2月3日、「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」は「電力市場に不備があった」とし、新電力の経営への深刻な影響を回避する観点から、高騰期間中の約定価格やインバランス料金を見直すよう経産省に求めていた。

 しかし、資源エネルギー庁は2月17日に開かれた有識者会議(第30回電力・ガス基本政策小委員会)で、「(自前電源や相対契約など)何ら事前の策を講じなかった事業者だけに着目して、市場参加者に対し、市場取引の結果を遡及的に見直すような措置を講ずることは慎重であるべき」との見解を示した。市場価格やインバランス料金単価などの見直しには応じない姿勢を見せた。

当局も見逃していたkWh不足のリスク

 果たしてこれは妥当な対応と言えるのだろうか。

 「何ら事前の策を講じなかった事業者だけに着目して」との言い回しから、エネ庁は市場取引の結果の公平性を重視しているように見える。

 だが、それは目先の公平性なのではないだろうか。

 2月17日の有識者会議では今冬の需給ひっ迫に関連して、電気事業連合会、送配電網協議会、電力広域的運営推進機関に対するヒアリングがあった。いずれも安定供給運営に責任を負う組織である。

 そこで改めて明らかになったのは、これまでの需給検証においてはもっぱら発電設備(kW)の不足が起きないかどうかに力点が置かれ、燃料制約などで引き起こされるkWh不足に対する備えが不十分だったことだ。

 電事連は「リスクを考慮した需給電力量(kWh)想定および評価の不足」を課題に挙げ、広域機関は今後の対応策として「kWhバランス変動時等のリスク対応力(燃料確保状況等)の確認・報告」などを挙げた。

 市場高騰の背後には市場設計や運営に関する構造的かつ複合的な要因が絡んでいる可能性があるものの、直接の引き金となった燃料不足(kWh不足)は当局を含めて事前に適切な予見を持ち得なかったのが事実だ。