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 NECの研究所が開発を進めてきた新型FPGA「NanoBridge-FPGA」が2020年12月に事業化された。原子スイッチ(商品名はナノブリッジ)を使ったFPGAである。SRAMスイッチを使う、現在主流のFPGAに比べて、低消費電力、放射線耐性が高い、といった特徴を持つ。NanoBridge-FPGAは、現在、NECの研究所からスピンオフしたスタートアップ企業「ナノブリッジ・セミコンダクター」(本社:茨城県つくば市)に移管されている。NEC研究所時代からこのFPGAの開発に携わり、現在はナノブリッジ・セミコンダクターの代表取締役を務める杉林直彦氏に話を聞いた。

原子スイッチ「ナノブリッジ」の概要
原子スイッチ「ナノブリッジ」の概要
(出所:ナノブリッジ・セミコンダクター)
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既存FPGAとNanoBridge-FPGAを比較
既存FPGAとNanoBridge-FPGAを比較
現在主流のFPGAは、SRAMスイッチを使うタイプ(表の左から2列目)。このタイプでは電源投入時に、毎回、FPGAの内容を書き込む必要がある。それより右のタイプは、NanoBridge-FPGAを含めて不揮発性のスイッチなので、電源を切断しても、再書き込みの必要がない。(出所:NECプラットフォームズ)
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 杉林氏によれば、ナノブリッジの起源は、2001年に理化学研究所で原子スイッチの動作原理を確認したことにある*1。03年にNECの研究所で固体電解質を活用する技術を開発、その後も様々な開発が続けられた。17年にはNECでの事業化の話が持ち上がり*2、政府系のプロジェクトなどに適用されたようだ。NanoBridge-FPGAを民間プロジェクトへも適用するために19年9月に設立されたのがナノブリッジ・セミコンダクターである。

原子スイッチ(NanoBridge)とそれを使ったNanoBridge-FPGAの足跡
原子スイッチ(NanoBridge)とそれを使ったNanoBridge-FPGAの足跡
(出所:ナノブリッジ・セミコンダクター)
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 会社設立の19年には、NanoBridge-FPGAがJAXA(宇宙航空研究開発機構)の革新的衛星技術実証1号機(RAPIS-1)に搭載され、実証実験が行われた(ニュースリリース)。「放射線が高い環境での動作を確認しただけでなく、センサーで捉えた画像を圧縮処理した。圧縮画像は地上に送られてきた」(同氏)。実証実験では40nmプロセスで製造した約100Kゲート規模のNanoBridge-FPGAが使われた。

JAXAの人工衛星において2019年に実証実験
JAXAの人工衛星において2019年に実証実験
(出所:ナノブリッジ・セミコンダクター)
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