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通常の廃炉も30年

 前述のように、国内の商用原発はこれから徐々に廃炉を迎えていく。24基のうち東日本大震災の前から廃炉に着手していたのは3基。この3基のうち、最も作業が進行しているのが日本原子力発電(東京・台東)の東海発電所(茨城県東海村)である。営業運転は1966~1998年の約32年間。廃止措置は2001年度に始まり、完了は2030年度を見込む。

 完了まであと20~30年*2と聞いて「長い」と感じる福島第1原発の廃炉であるが、平穏に寿命を全うした原子炉の廃炉も30年ほど掛かる仕事*3なのである。

 世界に目を向けても、廃炉が完了した原発はそれほど多くない。国際原子力機関(IAEA)によると、2021年2月末時点で運転中の発電用原子炉は世界に443基で、廃止を決めたのは192基だ。一方、廃炉措置が完了したのは17基とみられている。国別の内訳は、米国13基、ドイツ3基、そして日本の1基である。この1基とは、前述したJPDRのことだ。

*2 政府の中長期ロードマップによると、福島第1原子力発電所の廃炉措置を完了する目標時期は、冷温停止状態となった2011年12月から30~40年後とされている。

*3 原子力発電所によって廃止措置の期間は異なる。例えば、中部電力の浜岡1・2号機は約28年、日本原子力発電の敦賀1号機は約24年、四国電力の伊方1号機は約40年とされる。

図8 廃止措置を実施中の東海発電所(右の建物)
図8 廃止措置を実施中の東海発電所(右の建物)
日本原子力発電(東京・台東)の東海発電所(右)は、国内の商用原発の中で最も早い2030年度に廃止措置が終わる。左は東海第二発電所。(出所:日経ものづくり)
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 原子力業界において、廃炉という挑戦は、原子炉の開発や運転・保守といった仕事とは性格の異なるものなのだという。ある関係者は、自動車業界に例えながら、クルマを開発する自動車会社や、人や物を運ぶ運送会社というよりも、スクラップ業に近い考え方が廃炉には必要になってくると話す。

 上の例えでいくと、原子炉メーカーは自動車会社で、電力会社は運送会社にあたる。電力会社が廃炉を担うということは、運送会社がスクラップ業に進出する状況に似ている。

 すると、廃炉という現場は新しい技術開発の華やかな舞台というよりも、既存の技術を組み合わせて使いこなす力と、長期のマネジメント力がより重要になってきそうだ。商機があるのは、設計に強いメーカーというより、日ごろから製造ラインの保守や点検に携わる企業かもしれない。