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 「家族は『あなたは趣味=仕事だから働く場があるなら働けばよいのでは』というスタンス。友人は『まだ働くの』と『可能な限りやれば』と大きく2つに分かれたが、応援してくれている」。TISのインダストリー事業統括本部金融事業本部リース・ローン事業部リース・ローンビジネス第1部の井口克郎氏(66)はこう語る。

 井口氏はリースやレンタル業務に関するシステム開発のプロジェクトマネジメント(PM)などを担当するシステムエンジニア(SE)だ。1978年にTISの前身である東洋情報システムに入社後、一貫して金融系システムなどの開発に携わってきた。2019年度に65歳の定年を迎えたが、TISが2020年度に導入した65歳以降の再雇用制度を利用して、今も現場の一線で働き続けている。

TISの井口克郎氏は同社の再雇用制度を利用して、66歳になった今もシステムエンジニアとして働き続けている。
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TISの井口克郎氏は同社の再雇用制度を利用して、66歳になった今もシステムエンジニアとして働き続けている。

 この制度の特徴は、再雇用後も正社員と同様の基本給や賞与、人事評価、勤務制度などの処遇を適用することだ。現場からの要望があってかつ、本人が再雇用を希望する場合に、1年更新で70歳まで雇用を継続する。2020年の導入時は、SEである井口氏とマーケティング職、営業職の合計3人が制度を利用した。井口氏は再雇用を選んだ理由について「自分はまだ働けるという気持ちがあった。身体などへの負担が大きい点もあるが、メンタルを含めた健康維持にも良いと思っている」と話す。

2019年度には定年を65歳まで延長

 TISは今回の再雇用制度を導入する前年の2019年度、それまで60歳だった定年を65歳まで延長した。60歳、63歳、65歳の中から定年を選択できる制度だ。以前の制度で再雇用した60歳以上の契約社員も、正社員に復帰できる道を用意した。年金は確定拠出年金制度に基づいて60歳までとなるが、職種や基本給、賞与、人事評価、勤務制度などは60歳までの処遇を適用する。

 以前の制度では、60歳を迎える社員の中から希望者を契約社員(1年更新で65歳まで)として再雇用していた。しかし、対象者の再雇用率が40%弱にとどまることもあったという。その背景には、55歳以降は処遇と職責を逓減して60歳の再雇用で一気に減らす仕組みだったことがある。再雇用した契約社員は賞与がなく(報酬は基本給と通勤手当のみ)、業績などの目標を達成しても報酬には反映されなかった。再雇用後の給与が現役時代から30%近く減る人もいた。社内の意識調査でも、55歳以上の社員は仕事へのモチベーションが大幅に落ちる傾向があったという。

 こうした仕組みは、過去に定年を55歳から60歳へと延長したときに導入したものだった。当時は人件費の上昇インパクトを軽減する措置だったが、シニア人材の活躍が増えている今では「同一労働同一賃金」の観点からも時代遅れとなっていた。

 以前の制度では、優秀なシニア人材を引き留めづらいという課題もあった。再雇用の条件が折り合わない場合は、外部の会社に所属してもらって業務を委託するといった対応をしていた。しかしシニアの活用が求められる中で、このような個別対応を続けるのは限界がある。このため55歳以降に処遇・職責を逓減する仕組みを廃止するとともに、定年自体を延長することにした。その結果、60歳を迎える社員のほぼ100%がその後もTISで働き続けるようになった。