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 医療機関などで健康保険証としてマイナンバーカードを利用するプレ運用が2021年3月4日に始まった。政府は同年3月末に医療機関など全施設の6割に関連システムの導入を目標としているが、2月時点で申し込み施設は全施設の3割と目標の半分にとどまり、早くも暗礁に乗り上げつつある。

マイナンバーカードの健康保険証としての利用に必要となる、顔認証付きカードリーダー端末。医療機関などの受付窓口に設置する
マイナンバーカードの健康保険証としての利用に必要となる、顔認証付きカードリーダー端末。医療機関などの受付窓口に設置する
撮影:日経クロステック
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ベンダーの見積もりが補助金上限額を上回る

 健康保険証としてマイナンバーカードを利用できるようにするには、医療機関などが顔認証付きカードリーダーを導入するほか、ネットワーク環境の整備やレセプトコンピューター(レセコン)などのシステム改修も必要だ。医療機関はレセコンを通じて請求のための閉域ネットワークである「オンライン請求ネットワーク」にアクセスし、患者の保険資格を確認する。こうした一連の仕組みを「オンライン資格確認」と呼ぶ。

健康保険証としてマイナンバーカードを利用する「オンライン資格確認」の概要
健康保険証としてマイナンバーカードを利用する「オンライン資格確認」の概要
出所:厚生労働省
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 厚労省はオンライン資格確認の普及促進のため、顔認証付きカードリーダーを無償で提供するほか、システム改修などの費用を補助している。もともとは上限額の半額などを補助するとしていたが、2021年3月末までの申し込みで全額補助に引き上げるとして導入を促している。

 だが、2021年2月21日時点で顔認証付きカードリーダーの申込数は、全施設の32.8%にとどまる。政府は2021年3月末までに全体の6割程度、2023年3月までにほぼ全ての施設で導入すると2019年9月のデジタル・ガバメント閣僚会議で決定しているが、目標にはほど遠い。

 厚労省は導入が進まない理由の一つとして、システム改修に必要なベンダーの見積もりが過大になっていると指摘する。「パソコンやルーターの購入で77万9400円、設定やセットアップに20万円で合計97万9400円。そこに37万9400円を値引きするとして、60万円という見積もりが診療所に対してあった」(厚労省医療介護連携政策課)。診療所向けの補助金上限額42万9000円を大きく上回る。厚労省は事前のベンダーからのヒアリングをもとに補助金の上限を決めており「標準のパッケージなら、上限額で収まるはずだ」(厚労省医療介護連携政策課)とする。

 日本医師会が会員医療機関にベンダーの見積もりをヒアリングしたところ「診療所全体では50万~60万円が多かったが、高いところでは80万円以上のケースもあった」(日本医師会の長島公之常任理事)。

 福井県医師会会長で池端病院の池端幸彦院長は県医師会として導入を推進している。自身が院長を務める池端病院でも、普段から付き合いのある地元ベンダーのミタスに見積もりを依頼した。同病院のレセコンはLinuxで動いており、Windowsよりも追加の費用がかかるとして、見積もりは合計約500万円だった。病院向けの厚労省の補助金上限額210万1000円の2倍以上だ。「補助金額を大幅に上回っているので、どうしようかと様子見になっている」(池端院長)

 北陸地方を中心に70~80件の医療機関のシステムを担当するミタスにはこれまで約60件の問い合わせや見積もり依頼があったが、同社による見積もり結果の多くは厚労省の補助金額の上限を上回る。「そもそも外部とのネットワーク環境がない医療機関もある。ネットワークを構築して、そのうえでレセコンのシステム改修が必要となってくる」(立石正治専務取締役)。同社が担当する医療機関で実際に導入までこぎつけた医療機関はまだないという。