全3886文字

 「DOBOTやラズパイが仕事の付加価値を簡単に高めてくれた」――。自動車工場の生産設備向けに治具などの製作を手掛けてきた産技(愛知県豊田市)代表取締役の磯谷充氏はこう目を細める。

“賢いからくり”のデモンストレーション機の1つ「からくりシューター」
[画像のクリックで拡大表示]
“賢いからくり”のデモンストレーション機の1つ「からくりシューター」
[画像のクリックで拡大表示]
“賢いからくり”のデモンストレーション機の1つ「からくりシューター」
ワークの入ったコンテナが滑り下りた先でDOBOT Magicianがワークをピッキング。空になったらコンテナをさらに滑り下ろして排出する。(出所:日経クロステック)

 従来はもっぱら生産ライン向けの架台や治具の製作を手掛けていた同社。2020年6月にデスクトップサイズの小型ロボット「DOBOT Magician」(中国Shenzhen Yuejiang Technology、以下DOBOT)や、小型ボードPC「Raspberry Pi」(ラズベリーパイ、以下ラズパイ)、オープンソースソフトウエア(OSS)などを駆使した“賢いからくり”を開発するプロジェクトを立ち上げた。

 板金や溶接品しか造ってこなかった同社にとって電気・電子制御仕掛けのからくり開発は大きな挑戦である。ところが取り組みの開始からわずか半年あまりで既に8台ほどを製作し、顧客の工場に納めたという。「これまでだったら決してウチに話が来なかった制御装置の製作依頼が来るようになった。将来は自社製品の開発にも挑戦したい」と、磯谷氏は意気込む。

からくりシューターのコントロールボックス
からくりシューターのコントロールボックス
制御にはRaspberry Piを用いている。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 賢いからくりは、同社の本社建屋2階の空きスペースを改装した「コボテック+(PLUS)」と名付けた一室で開発している。部屋には開発中の装置やデモンストレーション機などが置いてある。デモ機の1つが、ワークの入ったコンテナを移送して、ワークをピッキングする作業を想定した「からくりシューター」。アルミフレームの架台にラズパイとカメラ、小型ロボのDOBOTを組み合わせた装置だ。

 ワーク(デモ用の小さなチョコレート)の入ったコンテナをセット(投入)すると、コンテナに添付してあるQRコードを読み取ってコンテナの正誤を判断。誤投入でなければロックを解除する。するとコンテナが斜め下に滑り落ちる。所定の位置にきたコンテナのワークの位置を画像処理で認識した上で、DOBOTがワークをピッキングして脇に置かれたボックスの中に落としていくという仕組みだ。

 以前の同社だったらこのからくりのアルミフレームや機械的な機構部しか造れなかった。しかし電気・電子制御の技術を身に付けつつある今、従来のメカだけのからくりではなく、電子制御を組み込んだ「装置」を開発できるようになった。