全1977文字

 霞が関の中央官庁の間でデジタル人材の求人が急増している。外務省は2021年2月25日、外交業務のデジタル化などに携わる専門人材の募集を開始した。先行して募集を始めた農林水産省や金融庁、2021年9月に発足するデジタル庁などに続く動きだ。

 菅政権が打ち出す行政のデジタル改革を受けて、デジタル人材を民間から募集する動きは今後も他の省庁に波及する見通しだ。応募する人材も増えており、倍率が100倍を超える求人もある。霞が関のデジタル人材募集に死角はないのか。

新規プロジェクトのためデジタル人材を中途採用する外務省
新規プロジェクトのためデジタル人材を中途採用する外務省
[画像のクリックで拡大表示]

実務経験者10年以上を募集、30代で年収600万〜800万円

 外務省が募集するのは、省内業務を全面的にデジタル化する新プロジェクトに参画するPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)要員だ。現時点で想定するプロジェクトは、外交交渉に関わる文書の共有や決裁のデジタル化である。

 現在は紙に印刷し共有している外交文書や交渉過程の議事録などを全面的にデジタル化する。電子決裁も導入し、文書の修正やその指示などもデジタルで完結させる省内の業務コミュニケーション基盤を構築する。外交交渉に携わる職員からは「文書の印刷や配布、関係者からの決裁取り付けなどで本来業務に十分な時間が割けない」との声が出ており、交渉業務の質を高めるには業務のコミュニケーションを全面的にデジタル化すべきだと判断した。

 外務省で外交交渉に用いる文書は共有すべき関係者が多く、決裁の過程でも文書に多く修正が加わるなどの特殊性があるという。このため利用部門のニーズをくみ取ったシステム設計が必要だが、効率を高めるには同時に従来の決裁プロセスを見直すなど業務改革も必要になる。

 こうした業務改革の必要性なども踏まえ、募集するデジタル人材は、業務改善のフレームワークの活用経験、UI/UXにつながるWebフレームワークの知識、アジャイル開発プロセスへの理解、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入実績といったスキルや経験を高く評価するという。携わる業務は概要設計や調達などにおけるプロジェクトマネジメントだ。将来はシステム開発の内製化も視野に入れており、開発や運用もこなせる「プレーイングマネジャー」も歓迎するという。

中央官庁における最近の主なデジタル人材の中途採用
省庁募集期間募集する職種・スキル任期と採用予定数、待遇
外務省2021年2月25日〜3月24日PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)要員任期2年で1人、課長補佐相当
金融庁2021年1月7日〜2月3日ビジネスデザイナー/アーキテクト、IT監査スペシャリスト、金融DX向けアナリスト/セキュリティーコンサルタント任期2年でそれぞれ2人、課長補佐相当
デジタル庁(現在の募集母体は内閣官房)2021年1月4日〜1月22日プロジェクトマネジャーやシニアデータベーススペシャリスト、ITストラテジストなど12種類任期は2021年12月末まで(更新の可能性あり)で約30人、最も高い場合で審議官相当
農林水産省2020年12月8日〜2021年1月4日デジタル政策プロデューサー、システムプロデューサー/ディレクター任期3年でそれぞれ2人と3人、課長補佐相当
個人情報保護委員会2020年11月12日〜12月9日プロジェクトマネージャー候補任期なしで若干名、係長・課長補佐相当

 外務省が予定する採用数は1人で、2年間の任期付き職員として採用する。実務経験が10年以上の人材を課長補佐相当の待遇で採用する方針だ。実務経験の年数にもよるが、30代の課長補佐相当の年収は600万〜800万円が相場となる。民間で実際に豊富なPMO経験を持ち、UI/UXからRPAまで幅広い知識も備える人材が応募すると、給与は下がる可能性が高い。これは先行して募集を始めた農林水産省や金融庁なども同じだ。

 しかし先行して募集を始めた他省庁によると、応募は極めて好調だという。各省庁とも2人〜若干名の採用予定に対して数百人の応募が来ているからだ。求める人材像に合致する優秀なデジタル人材の応募も多いという。