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 三井住友海上火災保険がデジタル技術を使い、保険に関する新しい立ち会い調査に乗り出した。2021年2月に発生した福島県沖地震で被害に遭った地震保険の契約者を対象にした「リモート立ち会い調査」である。

 立ち会い調査とは、損害保険会社が保険金を支払ううえで必要不可欠な調査で、被害状況を確認する作業である。今回、三井住友海上火災はWeb会議機能などを備えたコミュニケーションツールを使って、被災地の現場と、保険金の算定などを担当する調査員がいる東京などの他拠点とを結んで「リモート」で立ち会い調査に当たっている。

 地震被害を対象にしたリモート立ち会い調査は同社にとって初。1日当たり75~100件程度、鉄筋コンクリートや鉄骨でできた建物をリモート調査できているという。

三井住友海上火災保険が2021年2月から始めているリモート立ち会い調査の様子。現場を訪問した撮影調査員がスマートフォンなどを使って、遠隔地にいる認定調査員と連携しながら進めている
三井住友海上火災保険が2021年2月から始めているリモート立ち会い調査の様子。現場を訪問した撮影調査員がスマートフォンなどを使って、遠隔地にいる認定調査員と連携しながら進めている
(出所:三井住友海上火災保険)
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緊急事態宣言下、調査員に対する契約者の不安をなくす

 同社がリモート立ち会い調査を始めた背景には、新型コロナウイルス感染症対策として2021年1月に発令された2度目の緊急事態宣言がある。これまで同社は自然災害の立ち会い調査には全国各地から調査員を被災地に派遣していたが、今回の福島県沖地震で従来のやり方を踏襲する場合、緊急事態宣言が出ている地域から多くの調査員を派遣せざるを得なくなると予想できた。

 「たとえPCR検査などを課して新型コロナに感染していないと分かった調査員を派遣しても、お客さまの不安を完全には拭えない。そう考えて、リモート立ち会い調査を実施することにした」。三井住友海上火災の荒木敏行損害サポート業務部事務プロセスチーム課長代理はこう説明する。

 リモート立ち会い調査の体制づくりは福島県沖地震が発生した翌日、2021年2月14日から始めて、5日後の2月19日からは実際にリモート立ち会い調査を始めた。コロナ禍ということもあり、損保業界では書面による調査も進めているが、ある契約者は書面調査で必要な写真撮影が難しかったという。三井住友海上に相談したところ、リモート立ち会い調査の紹介を受けて利用した。その契約者は「調査員にすぐに来てもらえて大変助かった」と話したという。

2人1組の調査員がTeamsで連携

 リモート立ち会い調査は遠く離れた2人の調査員がペアを組んで進める。1人は現地を訪問し、スマートフォンを使って損害箇所などの動画や写真を撮影する撮影調査員。もう1人は東京など緊急事態宣言の対象地域を含む拠点にいて、損害を認定して保険金の支払額の算定などをする認定調査員である。2人は同社が全社導入している米Microsoft(マイクロソフト)のコミュニケーションツール「Microsoft Teams」を介して、動画や音声でコミュニケーションする。

 具体的な進め方はこうだ。まず現場に着いた撮影調査員が契約者に調査方法を説明した後で、建物の全景などをデジタルカメラで撮影。その後、遠隔地の認定調査員と連携しながら建物の損害箇所を詳しく調べる。

 建物の構造によって確認箇所が異なるため、認定調査員は撮影調査員に指示して、契約者から申告がなかった箇所を含めて確認を進めつつ、図面を作製。この過程で契約者からの質問にもリアルタイムで回答する。損害箇所の確認が終わるとすぐに支払額を計算し、Teamsを通して契約者に説明して調査を終える。

 Teamsの動画の解像度は損害箇所を確認するのに十分だという。「認定調査員は、撮影調査員や契約者とTeamsですぐにコミュニケーションを取れるので、自身が訪問したときと同じように調査できる。お客さまも不安要素が少ないなかで早期に調査を終えて、保険金を受け取れる」(荒木課長代理)。

 リモート立ち会い調査の体制を整えるに当たって、同社は1日当たり75~100件を調査できるように、東京や大阪など全国の拠点から鉄筋コンクリート造りや鉄骨造りの建物をメインに調査する認定調査員を25人程度確保。木造の建物や家財を調査する認定調査員についても、全国で100人ほどがすぐにリモート立ち会い調査に加われるようにした。一方の撮影調査員は、契約者の不安を和らげるといった狙いから、被災地周辺から主婦層を中心に採用した。