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 東京都心から車で約2時間。多摩川の源流に位置する山梨県小菅村で2021年4月末、マルチコプター型のドローンを活用した配送サービスがスタートする(図1)。

図1 山梨県小菅村での配送サービスに使われる物流専用ドローン
図1 山梨県小菅村での配送サービスに使われる物流専用ドローン
エアロネクストが保有する重心制御技術「4D GRAVITY」を搭載することで、通常のドローンより飛行の安定性が高いのが特徴。機体サイズは、全幅2362mm×全長2148mm×全高390mm(予定)。搭載できる荷物は幅350mm×奥行き260mm×高さ200mm(宅配荷物の80サイズ)で、重量は最大5kg。システムから指定されたドローンスタンドへ自律飛行する(写真:エアロネクスト)
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 手がけるのは、西濃運輸を傘下に抱えるセイノーホールディングス(以下、セイノーHD)と、業務提携先のドローンのスタートアップ、エアロネクスト(東京・渋谷)だ。両社は既存物流とドローン物流を融合させた新しい物流システムを共同開発し、まずは同村で運用していく。実績を重ねた後は、全国で816市町村(小菅村を除く)があるとされる過疎地域に、このサービスを横展開していく計画だ。「全国展開を今後3年ぐらいでやり切りたい」とエアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏は目標を語る。

 両社が共同開発する物流のサプライチェーン「SkyHub」は、通常のトラック輸送のラストワンマイルにドローン配送を組み込んだものだ(図2)。この仕組みをエリアに導入すれば、商品がドローンで届くようになる。

図2 SkyHubの仕組み
図2 SkyHubの仕組み
通常のトラック配送のラストワンマイルにドローン配送を組み込んだ。荷物は「SkyHub ID」で管理される。セイノーHD以外の物流事業者の配送システムとも連携する。ドローンデポでは、エアロネクストの子会社「NEXT DELIVERY」(山梨県小菅村)が、入庫した荷物のドローンへの積み込みなど配送を担当する。自律飛行するドローンを監視する担当者はドローンデポに常駐する(イラスト:エアロネクスト)
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 利用者から見れば、通常の宅配便の配送と変わることはほとんどない。違いがあるのは、購入時に「ドローン配送」という選択肢を選べば、これまでは配送センターから物流事業者がトラックで自宅に荷物を届けてくれていたのが、ドローンが家の近くにある「ドローンスタンド」に荷物を置き配していく点だ。利用者にとっては、スタンドまで荷物を取りに行く手間が増えるが、人口約700人の小菅村は物流事業者にとって「配達限界エリア」の1つであり、これまでは配達頻度や回数が少ないという課題があった。従来より短時間で商品を受け取れるのは利用者にとって大きなメリットになる。

 もちろん、ドローンが配送できる重量には限りがある。機体の制約上、今回は最大5kgである。このため、医薬品や食料品、日用品といった配送のスピードが求められる小物が対象になる。5kgを超えるものについては、これまで通りトラック配送を利用する。「最初は医薬品が中心になるだろう。小菅村には診療所が1カ所しかなく、院内処方も限定されるため、場合によっては近隣の市まで薬の受け取りや購入に行ったりする必要がある。特に子供を持つ家庭などでの緊急対応のニーズが高いことを、住民へのヒアリングで知った」とセイノーホールディングス ラストワンマイル推進室室長兼ココネット取締役社長執行役員の河合秀治氏は語る。