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 市場の立ち上がりが前倒しされることを見越して、日本精工(NSK)が電動車両向け機械部品の開発を加速させている。同社は2021年3月24日、電動車の駆動用モーターの高回転化に寄与する玉軸受の第3世代品を発表(図1)。開発スピードを上げるため、新たな設計手法を導入した。

図1 NSKが開発した電動車向け玉軸受の第3世代品
図1 NSKが開発した電動車向け玉軸受の第3世代品
内径35mmの玉軸受の場合で3万8000rpmの高速回転に対応する。(出所:NSK)
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 NSKは20年3月に電動車向け玉軸受の第2世代品を発表している。内径35mmの玉軸受の場合で3万rpmまでの高回転化が可能なdmn(ピッチ円直径dm×最高回転数n)140万を実現した。dmnは軸受の高速回転性能を示す指標で、今回の第3世代品はdmnで180万を達成。同径の玉軸受で3万8000rpmまで対応できる。

 「まだ道半ば。他社も追随してくるので、1年後にはdmnで220万に達する第4世代品を発表する。そうしないと開発競争で生き残っていけない。トップを取り続けていくのが軸受メーカーとしての命題だ」。力を込めるのはNSKの執行役で自動車事業本部パワートレイン本部長を務める尾崎美千生氏である。

 駆動用モーターの軸を支持する役割を担う玉軸受の高回転化は、モーターの小型・軽量化に直結する。モーターの出力は回転数とトルクの積で決まり、トルクはモーターのローター径の2乗やローターの長さに比例する。

 このため、モーターの回転数を高めれば、出力を維持したままモーターを小型・軽量化できるのだ。3万8000rpmに対応したNSKの第3世代品の場合、標準的な玉軸受を使う最高回転数が1万1000rpmほどのモーターとの比較でモーター質量を約60%減らせるという。

 駆動用モーターを小型化したい自動車メーカーからは、「4万rpm以上まで回転数を高めたいという声も聞く」(NSKの開発担当者)という。こうした要望を受けて、NSKだけでなく、日系メーカーではジェイテクトやNTNなども高速回転に対応した軸受の開発に注力している。

グリースや樹脂材料は変えず

 dmnで180万を達成したNSKの第3世代品は、基本構成は第2世代品と同じ(図2)。潤滑剤としてグリースを充填するタイプ(グリース潤滑)のもので、使うグリースは変えていない。同グリースは、高速回転で軸受内部の発熱が増大することで油膜が形成されにくくなり、発生していた焼き付きに対する耐性を高めたものとしている。

図2 dmnで180万を達成
図2 dmnで180万を達成
dmnは軸受の高速回転性能を示す指標。第3世代品はdmn=180万でも異常発熱しないことを確認した。(出所:NSK)
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 軸受内部の転動体(玉)の間隔を一定に保つ部品である保持器の材料も、第2世代品と同じ樹脂材料である。強化繊維として炭素を添加するポリアミド(PA)とみられる。

 第2世代品から変えたのは保持器の形状だ。