全1968文字
PR

 ドラッグストア「ツルハドラッグ」を展開する業界大手のツルハが、中国人向けに日本の商品を通信販売する「越境EC(電子商取引)」に注力している。コロナ禍によって、数百億円規模だった同社のインバウンド売上高はほぼ消え去ったが、インバウンド需要をこれまでとは別の形で取り込む狙いだ。2020年8月にソフトウエアの開発に着手し、わずか2カ月で越境ECを立ち上げた。消失したインバウンド需要を一定程度補えるまでに成長したという。

ツルハのウィーチャット用ミニプログラム「鶴羽薬粧直郵」の画面
ツルハのウィーチャット用ミニプログラム「鶴羽薬粧直郵」の画面
(出所:ツルハ)
[画像のクリックで拡大表示]

 ツルハは2016年ごろにインバウンド事業部を立ち上げた。当時、中国からの訪日外国人が急増し、家電量販店やドラッグストアで「爆買い」する現象が起こった。ツルハも数百店舗で免税店としての体制を整え、需要を取り込んでいた。ところが2020年にコロナ禍で、インバウンド売上高の約95%が消滅した。

当面は戻らない訪日中国人需要をカバー

 持ち株会社であるツルハホールディングスの小橋義浩経営戦略本部長兼情報システム本部長は「少なくとも1~2年は中国のお客様に来店してもらえないことが明らかだった。すぐに手を打つ必要があった」と話す。

ツルハホールディングスの小橋義浩経営戦略本部長兼情報システム本部長
ツルハホールディングスの小橋義浩経営戦略本部長兼情報システム本部長
(出所:ツルハ)
[画像のクリックで拡大表示]

 そこで浮上したのが越境ECだ。実はコロナ禍以前から、爆買いが沈静化したり、中国側の制度改正によって旅行者の個人輸入品目に制限がかかったりという要因で、インバウンド事業に陰りが見えていた。そこで、中国から日本に直接注文して商品を受け取れる越境ECの仕組みを検討していたが、コロナ禍で実行を早めた。

 具体的には、中国のネット大手の騰訊控股(テンセント)が提供するメッセージアプリ「微信(WeChat、ウィーチャット)」にある「ミニプログラム」という仕組みを採用した。ツルハは決済サービス「ウィーチャットペイ」を通じてテンセントと取引関係があった。

 ウィーチャットはユーザー数が10億人を超えるとされ、中国で「スーパーアプリ」としての地位を確立している。さらにウィーチャットアプリ上で動くミニプログラムを充実させようとしており、ツルハにも活用を提案していた。ツルハの張 文競(チョウ・ブンキョウ)インバウンド事業部部長は「2019年ごろから提案を受けていた。当時は店舗が好調で、あまり真剣に話を聞いていなかったが、2020年になって意識が変わった」と率直に話す。

インバウンド事業部の張文競(チョウ・ブンキョウ)部長
インバウンド事業部の張文競(チョウ・ブンキョウ)部長
(出所:ツルハ)
[画像のクリックで拡大表示]