LINEがアプリ利用者の個人情報を、国外拠点を使って管理していたことが明らかになった。同社は中国からのアクセス遮断やデータの国内保管といった改善策を発表した。そもそも何が問題だったのか、一連の改善策は適切なのか、同社の2021年3月23日の発表から7つの疑問を読み解く。
そもそも何が問題だった?
一言で言えば、利用者への説明不足に尽きる。利用規約の分かりにくさに加え、利用者の心情への配慮が不足していた。
「信頼回復が第一。利用者に対する我々の配慮が足りず、こういう事態になったことを重く受け止めている。信頼回復のためになるべく早く明確に対応する必要があると考えた」。LINEの出沢剛社長は3月23日に緊急記者会見を開いた理由をこう説明した。
同社は現状の課題認識として以下を挙げた。「中国で個人情報にアクセスする業務を実施」「トーク上の画像や動画を国外で保管」「プライバシーポリシーで国名を明示せず」の3点である。中国からのアクセス完全遮断と同国における業務の終了、トークデータの完全国内移転、プライバシーポリシーの改訂といった改善策を講じるという。
LINEとしては通常の適切な業務として実施していたが、利用者への説明が不十分で不安を招いたとの認識だ。例えば中国子会社であるLINE Digital Technology(LINE China)は、利用者が不適切と判断したコンテンツについて監視するツールの開発や保守を実施していた。不適切と通報されたトークの内容や公式アカウントのテキストや画像といった「プライバシー性の高い個人情報」(出沢社長)にもアクセスできた。これらを「通常の適切な業務として実施していたが、プライバシーポリシーで明示していなかったのが今回の大きな課題と認識している」(同)。
法的な問題はない?
明確に違法とは言えないが、外部有識者会議や個人情報保護委員会の審査を経て最終的な判断が示される見通しだ。
個人情報保護法は「外国にある第三者への提供の制限」について、「個人情報保護委員会規則で定める基準に適合する体制を整備している者を除いて(中略)本人の同意を得なければならない」と定めている。
LINEは対話アプリ「LINE」のプライバシーポリシーの中で「お客様から同意を得た場合(中略)お客様のお住まいの国や地域と同等のデータ保護法制を持たない第三国にパーソナルデータを移転することがある」と記載している。利用者はアプリを使い始めるに当たって利用規約やプライバシーポリシーへの同意を求められるため、形式上は外国への個人情報提供に同意していることになる。