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 米Intel(インテル)のメモリー事業に、また1つ不安定要素が生じた。同社はNANDメモリー事業を韓国SK hynix(SKハイニックス)へ売却し、相変化メモリーの「Optane」に集中する方向で2020年10月に舵(かじ)を切ったばかりだ*1。Optaneは米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)の工場で生産されているが、その工場の売却を進めることをMicronが発表した。

 Micronは21年3月16日に、データセンター向けの戦略を転換することを発表し(ニュースリリース)、その中で相変化メモリー「3D XPoint」の事業から撤退することを明らかにした。3D XPointはIntelとMicronが共同で開発したもので、Optaneは3D XPointメモリー製品のIntelのブランドである。Micronは3D XPoint事業からの撤退に伴い、3D XPoint製品の製造のみを行っているユタ州リーハイの工場(Fab 2)の売却に向けた協議を始めており、21年中の売却合意を目指す。この工場ではOptaneが生産されている。

Micronが売却を決めた、ユタ州リーハイの工場(Fab 2)
Micronが売却を決めた、ユタ州リーハイの工場(Fab 2)
(出所:Micron)
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 IntelとMicronが3D XPointを共同開発した際には、Intelがコンシューマー向け製品を、Micronがエンタープライズ向け製品をそれぞれ開発して市場に投入するという狙いがあった。ただ、狙い通りにはならず、IntelとMicronの間で3D XPointの将来計画に食い違いが発生した。食い違いを解消することはできずに、19年上期に共同開発を終了すると18年7月に発表した*2

 宣言後もMicronは3D XPointの生産を行うと共に、独自に3D XPointをベースにした製品を開発してきた。19年1月にMicronは、Intelと共同でユタ州リーハイに設立した半導体製造会社「米IM Flash Technologies」のIntel持ち分株式を取得し、Micronのユタ工場(Fab 2)とした*3。この際、1年を超える一定期間、IntelはMicronに対し3D XPoint(すなわち、Optane)を製造委託する契約を結んでいたとみられる。今回、この製造委託契約の完了に合わせて、Fab 2の売却を発表したと推察される。なお、現時点では売却先に関しては何も発表されていない。もっともありそうな売却先はIntelだろうが、Intelでは21年2月15日に新CEO(最高経営責任者)が就任しており、戦略が変わる可能性がある*4。すんなりIntelが買収に応じるかどうか現時点では何とも言えない。

 今回の決定に関して、Micronは「顧客のメモリーやストレージの要求に応えていくために、3D XPointへのさらなる投資を正当化することは、市場での検証が不十分で難しい」と説明した。同社は19年10月に、3D XPointベースのエンタープライズ向けSSD「X100」を発表している(ニュースリリース)。ただし、X100は量産出荷には至らなかった模様で、3D XPoint事業はIntel向けに生産受託するだけになっており、追加の投資は無駄だと判断したのだろう。Fab 2を完全取得した際には、フラッシュメモリーの製造に転換すると思われていた。だが、19年8月にシンガポールの工場(Fab 10/10X)に新たに「Fab 10A」を追加しており、Fab 2をフラッシュメモリー向けに転換するより、シンガポールや日本、台湾の工場を拡張するほうが経済合理性が高いと判断したようだ。

3D XPointベースのエンタープライズ向けSSD「X100」
3D XPointベースのエンタープライズ向けSSD「X100」
(出所:Micron)
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