全2257文字
PR

 厚生労働省は、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「オンライン資格確認」システムの本格運用開始を、当初予定されていた2021年3月末から、遅くとも同年10月までに延期した。システムの基盤となるデータの正確性に致命的な不備、具体的にはマイナンバーが他人のものと取り違えて登録されるというミスが多発していたためだ。

(出所:PIXTA)
(出所:PIXTA)
[画像のクリックで拡大表示]

 マイナンバーカードを保険証として使うためには、健康保険組合などの「保険者」が加入者の被保険者番号や保険資格情報にマイナンバーをひも付けたうえで「医療保険者等向け中間サーバー」に登録する必要がある。国民皆保険制度のため、全国民のデータが対象となる。厚労省が工程を管理し、2020年11月から全国約3000の健保組合などが加入者データを順次登録してきた。主な入力ミスは、同じ健保組合内で他の加入者のマイナンバーと取り違えて登録するといったケースで、その総数は2021年2月時点で約3万件に上った。

 マイナンバーを含む加入者データを中間サーバーへどのように登録するか。その方法は健保組合の規模などによりさまざまだ。健保組合やその母体となる企業の基幹システムからマイナンバーと必要な情報を切り出してサーバーに取り込むところもあれば、紙に記入されたマイナンバーを手作業で中間サーバーに入力している健保組合なども存在する。手作業の入力はミスが発生しやすい。また、本人が誤ったマイナンバーを勤務先に伝えており、それがそのまま健保組合などに伝わっているケースなどもあると考えられている。

 その後、厚労省が健保組合などに入力ミスの確認を要請し、3月24日時点でマイナンバーの取り違え登録は50件ほどまで減ったが、再発防止のために2021年6月までにマイナンバーの取り違えを確認するシステムを導入する。存在しない番号を入力するとエラーが出るシステムはもともと実装されていたが、今回問題となった番号の取り違えは検出できなかったためだ。既に登録された番号が再度登録されるなど誤入力の可能性がある場合にアラートが出る。

 厚労省はプレ運用の中で今後生じる可能性のある他のエラーも含めて検証していく。「エラーがあることを前提にプロセスを修正していくことが重要だと考えている」と厚労省保険局医療介護連携政策課の担当者は話す。