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 2021年4月から全国の自治体で65歳以上の高齢者向けに新型コロナウイルスのワクチン接種が始まる。各自治体が接種予約を受け付けるために準備していたのが、対話アプリ「LINE」を使った予約システムだ。ところがLINE利用者の個人情報が中国の関連会社から閲覧できた問題が浮上し、LINEそのものの利用を停止する自治体が出てきた一方、継続を決めた自治体もある。ワクチン接種予約システムはどうなるのか。

 「LINE社が自治体向けに開発しているワクチン接種予約システムについては、同社やベンダーが保有するデータは全て国内で保存され、(中略)開発段階においては個人情報を必要としていないことを踏まえれば、開発を継続することは問題ないと考えている」。加藤勝信官房長官は2021年3月29日の記者会見でこう表明した。政府は個人情報や機密性の高い情報を含むLINEを使ったやり取りを一時停止する一方で、同システムは問題ないとした。

 だが、自治体では混乱が続いている。全国約1700自治体のうち、約900自治体がLINEの公式アカウントを利用。このうち、2021年2月中旬時点では約200自治体がLINEを使った接種予約システムの準備を進めていた。これから始まる接種予約に同システムを使うかどうかは、各自治体によって判断が分かれている。

LINEの画面から入力して接種予約する際の、接種予約のデモ画面
LINEの画面から入力して接種予約する際の、接種予約のデモ画面
(出所:LINE)
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「市民感情として理解が得られない」

 「LINEを使うことは市民感情として理解が得られない」――。こう話すのは人口約17万人の静岡県磐田市の担当者だ。同市はかねてLINEを使ったワクチン接種予約システムの開発を進めており、2021年3月17日にLINE公式アカウントを新設した。

 ところが開設したその日に今回のLINE問題が明らかになった。公式アカウントを開設したばかりで、まだ接種予約を始めていなかったことから、現状ではLINEを使った接種予約システムを使わない方向で検討しているという。「個人情報保護委員会の調査結果が出て、『問題ない』とならないと、市民からの理解が得られないと考えている」(磐田市の担当者)。

 判断を迷いながらも、市民感情に配慮して現状では白紙に戻す磐田市。こうした自治体は少なくない。

 「LINEを使ったワクチン接種予約は白紙になった」。日経クロステックの取材にある自治体の担当者はこう打ち明ける。

 この自治体はもともとコールセンターでワクチン接種予約を受け付けるのに加えて、オンラインでも予約を受け付けることが決まっており、そのオンライン予約システムとしてLINEを使ったシステムに白羽の矢を立てていた。LINEを活用した自治体向けシステム開発に強みを持つBot Express(東京・港)がワクチン接種予約システムを構築し、米salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)のクラウドサービスを活用するはずだった。

 「白紙」の判断に至ったのは複数の理由がある。まずこの自治体は公式アカウントを始めたばかりで登録する「友だち」がまだ少なかった。さらに高齢者へのワクチン接種は集団接種ではなく医療機関での個別接種を予定していたため、必ずしも大規模な予約システムが必要ではなかったことに加えて、接種予約システムを以前から契約していた電子申請システムで代替できるという選択肢もあった。

 ただ「今回LINEが白紙になり、オンライン部分をどうするか現場はまだ迷っている」(前述の担当者)状況だという。