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 「セガ」ブランドのゲームセンターを全国で約200店舗展開する業界大手のGENDA SEGA Entertainment(東京・大田)は、店舗従業員向けコミュニケーションツールを活用した業務改革を進めている。2020年末までにアルバイト・パートを含む約3800人を対象にナレッジ・マーチャントワークス(東京・江東)の店舗向けグループウエア「はたLuck」を導入。2021年春から本格活用を始めた。

ゲームセンター「セガ新宿歌舞伎町」の店内。店員がクレーンゲーム機の前で、タブレットに表示される「連絡ノート」などの内容をチェック
ゲームセンター「セガ新宿歌舞伎町」の店内。店員がクレーンゲーム機の前で、タブレットに表示される「連絡ノート」などの内容をチェック
(出所:日経クロステック)
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 GENDA SEGAは、はたLuckの電子掲示板機能である「連絡ノート」をゲーム機の扱いなどのノウハウ共有に使う。店長やベテラン店員らが「スロットマシンへのメダル補充の仕方」「クレーンゲーム機へのぬいぐるみの並べ方」などに関する文章と写真を投稿する。

GENDA SEGA Entertainmentが使う「はたLuck」アプリの画面。「連絡ノート」で業務ノウハウを共有する
GENDA SEGA Entertainmentが使う「はたLuck」アプリの画面。「連絡ノート」で業務ノウハウを共有する
(出所:GENDA SEGA Entertainment)
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 店員は自分のスマートフォンやタブレットのアプリでこの投稿を見て、業務の参考にする。「28人/41人」のように同じ店舗の店員のうち何人が見たかもひと目で分かる。コメントも付けられる。

 このほか、はたLuckのテキストチャット機能「トーク」を「今日休みます」「お願いした作業は今日中にできますか?」といった個別の連絡に使う。

 連絡ノートもトークもシンプルな機能だが、効果は大きいという。従来は店長が店員へ情報伝達するのに1日30~60分程度を要していたが、おおむね3~4割削減された。店長の残業時間の削減などにつながっている。

アナログだった店舗情報共有

 「ゲームセンター店舗での情報伝達は昔ながらのアナログのまま。何とかしなければ生き残れないと思った」。GENDA SEGAの河合英雄管理本部ITソリューション部部長はこう話す。河合部長は店長や本部の店舗営業統括部門などを経て、今は社内情報システム部門でDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などを担当する。

GENDA SEGA Entertainmentの河合英雄管理本部ITソリューション部部長
GENDA SEGA Entertainmentの河合英雄管理本部ITソリューション部部長
(出所:日経クロステック)
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 GENDA SEGAが抱えていた課題は他業態を含む多くのチェーン店に共通する。東京・新宿にあるゲームセンター店舗「セガ新宿歌舞伎町」の店員は約40人。ほとんどが学生などのアルバイトやパートだ。「週に3回、夜だけ」のような短時間のシフトで働く人も多い。互いに顔を合わせる機会は少なく、対面コミュニケーションは乏しくなりがちだ。

 従来の店舗でよく使われていたのが紙の連絡ノートとLINEだ。ノウハウ共有には紙の連絡ノートを使っていた。店長がゲーム機の扱い方などを写真に撮ってプリントアウトし、ノートに切り貼りする。その作業自体に手間がかかるのに加え、紙では誰が見たか分からず、ノウハウの共有が徹底されないという課題があった。

 店長と店員間の連絡には、個人向けのLINEがよく使われていた。当事者にとっては便利だが、「会社として管理できない『シャドーIT』は望ましくない。個人のLINEに仕事の連絡が割り込むのを嫌う人もいた」(河合部長)。