全2967文字
PR

 米国で製品を販売する日本メーカーを不安に陥れる品質不正問題が勃発した。京セラと東洋紡の2社が、材料において米国の安全規格であるUL規格に関して長年にわたって不正を行っていたことが発覚したのだ。現在、両社で第三者による調査が進んでおり、不正が見つかり次第、該当製品のUL規格認証が取り消される事態が続いている。東洋紡では不適合品(以下、不適合材料)が当初1製品だったが、2021年3月26日時点で7製品にまで拡大した。

UL規格に関する不正が発覚した京セラと東洋紡
[画像のクリックで拡大表示]
UL規格に関する不正が発覚した京セラと東洋紡
両社の不適合材料が使われた製品は多く、日本の製造業にとって大きな品質問題に発展する可能性がある。(出所:両社のWebサイト)

 日本の製造業に与える影響は計り知れない。不適合材料を使っているか否かを多くの企業が調査し、しかるべき対応を余儀なくされる。既に、対象の不適合材料を突き止めて顧客に連絡したり、販売を停止したり、材料を切り替えたりする企業が出ている。

 中でも気になるのは、部品点数の多い自動車メーカーへの影響だ。両社の不適合材料は自動車にも使われている。だが、自動車メーカーが材料に関して情報を把握しているのは1次部品メーカー(ティア1)か、せいぜい2次部品メーカー(ティア2)まで。「部品メーカーからの報告を待っている。材料を扱っているのはティア2以降のメーカーのため、情報収集に時間がかかる」(日産自動車)というのが現状だ(2021年4月1日時点)。

東洋紡の材料で造られた自動車部品
[画像のクリックで拡大表示]
東洋紡の材料で造られた自動車部品
左はエンジンの吸気ダクト。トヨタ自動車のクルマに搭載されているとみられる。2021年2月3日にUL規格の認証を取り消された汎用エンプラ「バイロペット」とエラストマー「ペルプレン」が使われている。右はホンダが実用化したクラッチペダル。同じくUL規格の認証を取り消された汎用エンプラ「グラマイド」で成形している。(出所:日経クロステック)

 トヨタ自動車のクルマにも、UL規格の認証を取り消された東洋紡のプラスチックで成形された自動車部品が載っている。トヨタ自動車は「個別の取引についてはコメントを差し控える」という回答のため、対応については不明だ。だが、「購買部門や品質保証部門に対し、『東洋紡に乗り込んで再発防止策を立案してこい』という指令がトヨタ自動車の上層部から出ているはずだ」(元トヨタ自動車の技術者)という声が一部で上がっている。

 このUL規格の不正問題が日本企業に及ぼす影響が大きいとみられるのは、次の3つの条件に当てはまるからだ。[1]米国のデファクトスタンダード(事実上の標準)、[2]長期にわたる不正、[3]幅広い用途――である。要は、幅広く大量に使われた製品(材料)が、米国で広く認知されている規格に背いているためである。